Nicotto Town


まぷこのぶろぐ・・・か?


「契約の龍」(140)

 「…で、具体的な手順は?」
 再度クリスの詰問に戻る。
 「具体的、って言っても…特に変わった事は。相手が手強いだけで。…えーと…」
 口籠りながら指を折って手順を数え始める。
 「まず、「龍」に接触して、内諾を取るでしょ。それから、クレメンス大公を起こして、契約の解除と、ついでに再契約をお願いする。…で、「憑代」のところへ行くなり引き寄せるなりして、一時的に「龍」の体を復活させて、締めに、クレメンス大公に再契約してもらう」
 「…その、計画の事は、今まで誰かに話した?関係者に」
 「だから、陛下と、全部ではないけど…「憑代」の保管者には」
 「…クリス。憑代、って…」
 「…うん、あのひと。…場所もちょうど海だし。場所も確認済み」
 よく《ラピスラズリ》が承知したものだ。探すのに手を貸したせいだろうか?
 「で、私が手伝うのは、最初の段階だけでいいの?」
 「取り敢えずは。…最大、どれくらいいられそう?」
 「雪が解ける前に終わらせたいから…情報収集の時間を取っても……ひと月かそこら、かね」
 「ひと月…かあ…だったら、大公を起こすとこまで手伝ってもらえる、かなあ」
 「ところで、「龍」には接触できるようになったの?」
 「んー…自分のではだめだけど、人のからだったら、できるみたい。…というよりも、学院へ入ってからは、試した事ない」
 「…いや、夏にあったろう?クレメンス大公のところで」
 「…でもあれは、私が意図的にやった訳じゃないから」
 「どういう事?」
 どういう訳かこちらを向いて訊かれたので、説明する。クレメンス大公の金瞳から「龍」に接触しようとした時に、急にクリスの「金瞳」が活性化して、触手を伸ばしてきたので、そちらから接触することにした、と。
 「…ふうん…クリス自身の「金瞳」を入り口にした方が手間がかからなくていいんだけどねえ。もう一度できそう?」
 「んー…」
 クリスが中空に視線をさまよわせて何か考え込む。
 「…あ。ダメだ、どっちみち。今、遮蔽してあるから」
 「遮蔽?またどうして…」
 「どうして、って…」
 こちらをちらりと見る。代わって説明しろ、と?
 「…陛下の「金瞳」と同じですよ。協力はしない癖に食欲は旺盛なので、面倒事を避けるために。クリスの制服の裏側には、夏冬問わず「遮蔽」が縫い付けられているそうです」
 「ふうん…」
 嘘は、言ってない。
 「まあ、理由はどうあれ、クリスのが使えないんだったら、クレメンス大公のを借りるしかないわねえ。…最初の予定通りに」
 「他のは全部遮蔽したからね」
 「こんな時刻に随分しっかり食べてると思ったら。…例の双子か?」
 「陛下よりあっちの方が弱そうだけど、ちょっと遠くにいるから、頼めなくて」
 クリスが祖母の方に目をやると、祖母の方は今一つ信頼できなそうな表情でクリスを見返す。
 「ちゃんと遮蔽できてる?」
 「んー…もともとの結びつきが、あまり強くないみたいでねぇ…「金瞳」が痕跡程度しかなくて。とにかく、「遮蔽」はしてきた」
 「あんまり安心できなそうな物言いだけど、大丈夫なの?」
 「出来る限りの事は、としか言えないけど。もし遮蔽が破れるようなら、居所はアレクが知ってるから」
 …それは「道案内を頼む」という程度の事か?それとも「事後処理は任せる」と言う事か?
 「…じゃあ、とりあえず明るくなるまでは何もできる事はない、かねえ?」
 クラウディアの言葉で、その場は散会、という事になった。

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