タケシの武勇伝…第二部(5)
- カテゴリ:自作小説
- 2010/01/02 11:45:40
---第1部あらすじ---
将来を有望視された野球少年北野健(タケシ)は、中学3年の冬、不慮の事故で左手に銃弾を受けてしまいボールが握れなくなってしまう。
8ヵ月後、仕方なく進んだ地元の高校で鬱屈した毎日を送っていたタケシは、成績不振者が集められる夏休みの補習授業で佐々木真也(シンさん)と出会う。
シンさんの家に招かれたタケシは、彼の話から事故の事情を知り一時憤慨するも、手術によってもう一度ボールを握れるようになると勧められる。
戸惑いながらも、自分を応援してくれるさまざまな人々の思いに触れたタケシは手術を受けることを決断した。
手術後、びっちり予定が書き込まれたリハビリ表には「タイピング」と書かれてあったのだが・・・
≪地獄のタイピング・リハビリ≫
タイピング初日は10秒間1回クリアで済んだが、翌日には2回、3日目は3回と日を追って回数が増えていった。 だが、タケシの方もそのつど徐々に慣れていき、翌日には5分、3日目には3回をすべて一発でクリアしていた。
この調子ならの気持ちで臨んだ4日目…
いつものようにPCを立ち上げるといつの間にか画像が時計からメトロノームに変わっていた。タケシが不思議に思いながら指示に従ってキーボードに指を置くと、昨日まで4本指だったのが小指を除いた3本に変わっていた。その上、それまで『カッチッ、コッチッ』と時計の秒針に合わせたペースが、『カチコチ、カチコチ』とあきらかにペースアップしていた。
『デハ、ハジメマス。J・T・E、J・T・E………』
…くっ、なんだ?早っ・・・!
『………Peee!ヤリナオシデス。』
タケシは、意地でもクリアしてやろうと必死になった。だが、結局1時間経ってもクリアできなかった。
…もう指動かねぇ・・・今日はもう止めよう!
タケシは、固くなった左手を振りながらおもむろにサックを外そうとした。ところが、指を包んでいるサックは押しても引いても外れてなかった。
すると、『…クリアシナイトハズレマセン。ユビヲヤスメ、マタトライシテクダサイ』という声が流れた。
…ウ、ウソだろっ!
それから30分後…
何度やってもクリアできず、いい加減イラついたタケシは、考えた末に左手に右手を添えて4日目の10秒をなんとかクリアした。
…フゥ~、やっと外れた・・・
一瞬このまま外れないんじゃないかと思っただけに、タケシは吊りそうな左手をブラブラ振りながら心底ホッとしてイスの背にもたれ掛かった。心の中には拭えない冷や汗と不快感がドッと溢れ出していた。
…クリアするまで止められない・・・
昨日までのゲーム感覚は吹っ飛び、得体の知れない恐怖感にタケシは包まれた。これが地獄のリハビリということを初めて知った瞬間だった。
しかし、タケシはまだこのタイピング機器の精密さに気付いていなかった・・・
※※つづく※※
地獄のリハビリ~~厳しそうですねぇ~~。
ガンバレ、タケシ!!!
このリハビリでタケシ君は何を学ぶのでしょう。