タケシの武勇伝…第二部(7)
- カテゴリ:自作小説
- 2010/01/15 06:18:30
---第1部あらすじ---
将来を有望視された野球少年北野健(タケシ)は、中学3年の冬、不慮の事故で左手に銃弾を受けてボールが握れなくなってしまう。
8ヵ月後、成績不振者が集められる夏休みの補習授業で佐々木真也(シンさん)と出会い、彼の話から事故の事情と手術によってもう一度野球ができるようになると勧められる。
自分を応援してくれる人々の思いに触れたタケシは、手術後のリハビリに励むのだが・・・
≪定食屋での再会≫
「リョウさ、今日昼メシどこ行くんだ?」
「えっ、タケちゃん弁当は?」
「もう食っちまってさ。腹へってしょうがねぇんだよ。外行かねぇか…」
「いいけど…タケちゃん、あの弁当もう食べたの!」
「なんかすっげぇ腹へっちゃってさ。へへ…とにかく行こうぜ!」
二人は教室を出ると、裏門の斜向かいにある定食屋に向かった。看板に「やまだ屋」と書いてある。質より量の学生御用達の店で、おかずも大量だがご飯・味噌汁もお代わり自由のありがたい店だった。
だが、二人が店の前に立った時、リョウは一瞬不思議に思った。なぜなら、いつも順番待ちしている生徒の姿が見当たらなかったからだ。
「マズイ!タケちゃ…」
異変に気付いたリョウが口を開きかけたが、空腹のタケシはサッサと扉を開いてしまった。入ったとたん、タケシは目つきの悪い二人の大人にジロリと見つめられた。一人は店主であり、もう一人はゴリ山さんだった。
「おう、珍しいな北野!…うん?石橋も一緒か。ここ座れや。おう!」
…うわっ、ゴリ山さん!!
タケシとリョウは思わず「回れ右」したかったが、名前を呼ばれたからにはもう遅かった。向かいの席に手招きされた二人は、お見合いのように体を固くして座ることになった。
「リョウ、何で止めなかったんだよ!」
「止めようとしたらサッサと入ったじゃん!」
稀にゴリ山さんがこの店で昼食を摂る時があり、その時だけ生徒は誰も店に来なくなるのだ。別に怒られる訳ではないのだが、ゴリ山さんの視線を浴びながらでは誰も飯が喉を通らないらしい。 もちろん二人もそのクチだったが、いつもなら窓の外から確認して入るのを今日はタケシの勇み足で確認を怠ってしまった。道理で誰も表にいなかったはずである。
ひそひそ会話する二人に、店主がニコニコしながら注文を聞きに来た。本来なら生徒たちでいっぱいになる時間なのに今日に限って誰もこない。不思議に思っていたところに二人が入ってきたのだ。これから忙しくなると思っての笑顔だった。
すると、ほどなく話をしながら扉を開けた生徒が二人入ってきた。先に入った者が「おじさん、おすすめ定食ふた…っ」といいかけて、ゴリ山さんを見つけて言葉に詰まった。
「がはははっ!なんだ、今日は補習組の集まりか。おう、シロー、高岡、こっち来いや。おう!」
入ってきたのはシローちゃんとマサミだった。ゴリ山さんの言うように、奇しくも補習組の4人がまとめて座らされることになった。
「シローちゃん、なんで入ったんだよ!」
「仕方ねぇだろ。生徒がいるの見えたんだから…事故だろこれは!」
どうやら二人は、タケシたちの姿を見て安心して入ってきたらしかった。タケシもリョウも「まったくそうだ」と心の中でつぶやいた。
4人は、6人掛けの四角いテーブルを囲んで向かい合って座らされた。席をずらしたゴリ山さんは、それぞれの顔を間近で見ながらニヤニヤしている。
うつむきかげんできちんと座っている4人の姿は、まるで集団見合いのようだった・・・
※※つづく※※
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ゴリ山さんと食事の時間に出会うのはイヤですね
だって喉を食事がとおらないんですから
喉に食べ物がつまりますよ
揃って何が話されるのか…楽しみですね。
しかも、補習組の4人とあっては、話しも長くなりそうですね。
タケシのお腹は耐えられるのかなぁ~~(●´艸`)