Nicotto Town



久遠永遠桜の下で【2】夢と泉とお見送り

「おい、ミカル!」「だから 私の名前は ミカルじゃなくて「ミカエル」です!」

「ミカエルって名前の西洋の天女様って言われても いまいち ピンと来なくてなぁ~」
「そりゃあ 東洋の人から見れば 大天使なんて珍しいでしょうけど…」
見知らぬ東の島国に左遷されて落ち込んでいた大天使ミカエルに「ミカル」という名前を与えたのは 
「タカ・マガタマ」で大暴れして 天界を追放されたスサノオ族の「タケル」だった。

ミカルは ゆっくりと目を覚ます。
『きっと ミカルさんは 前世で タケルさんと会っているのかもしれませんね』
昨日のパジャマパーティーで マリアが「前世」って言ってたから こんな夢を見たのかな?
ミカルが 頭の中で思索を巡らせていると お腹がグゥ~ッと鳴る。
腹が減っては何とやら。ミカルは ベッドから出て 食堂へ向かった。

「ミカルちゃん!おっはよう~♪
今朝は「くまくまベーグル&ドーナツ」からの出張モーニングサービス!
『くまくまモーニングバイキング』だよ~♪」
クリーム色のクマ「クマ・タイヨウ」が 元気よく挨拶して ミカルにトレイを持たせ、食堂の中へ案内した。
ミカルは くまくまモーニングバイキングの中から
「プレーンベーグル」「まんまるしっぽドーナツ」「くまくまサラダ」「くまくまコーヒー」をトレイに乗せた。
「あ!ミカルちゃ~ん!こっちこっち~!」
ミツルとココアが一緒のテーブル席で 朝食を食べているカンナが ミカルに気づいて 声を掛ける。
「今 朝御飯 食べてるの 私たちだけ?」と、ミカル。
「ああ。お姫様たちは もう食べ終わって 帰り支度してるぞ」
ミツルは デザートの「イチエイチゴ」を食べながら答える。
「パジャマパーティーの翌日 朝食を食べたら 現地解散。いつも通りね。
ミカル、まんまるしっぽドーナツ ひとつ くれる?」
ココアは「くまくまホットココア」を飲みながら「まんまるしっぽドーナツ」を ひとつ つまんだ。
「…マリアは どうしたの?」
ミカルは マリアの不在にようやく気がつき おそるおそる聞いてみた。
「マリアちゃんなら とっくに朝御飯を食べ終わって 
『お散歩してきますぅ~!』って 言って 外に出ていったよ~?」
カンナは「くまくまマカロン」を食べながら のんびりと答えた。
「えっ!? た、大変…!」ミカルは 青ざめた。

一方その頃、アン・ダンテの屋敷近くの森の中を散歩していたマリアは、
わずかに残った朝霧に陽の光が差し込む「ミスティの泉」で 一人の男が水浴びをしている所に 出くわした。
「神よ…私は美しい」
「その声は…ロキさんですかぁ?」
「ロキ?ああ…『ロキ・ミザール・アルコル』のことか?
私は ロキと声が似ているから さっきのキミのように ロキと間違えられることが多くてな。
フッ、確かに「ロキ・ミザール・アルコル」は 美しい顔 美しい身体をしているが、
頭のてっぺんからつま先まで完璧に美しい顔と肉体を持つ 水仙の花の精霊「ナルソキッソス」である
この『ミスティ・リザド・ナルシィ』の足元にも及ばんよ…」
「あ、あの…ミスティさん。せめて、腰布くらい巻いてもらえませんかぁ?」
マリアは 顔を真っ赤にして ミスティの裸体を凝視しないように 視線をそらす。
「キミ、この辺じゃ見かけない娘だね。名前は何という…」
「マリア!やっぱりここにいた!」「ミカルさん!」
「早く屋敷に戻ろう!見送りに間に合わなくなる!」
ミカルはマリアを見つけるなり ナルシストな花の精霊の男「ミスティ」には目もくれず
マリアの手を引いて 足早に「ミスティの泉」を あとにした。

マリアとミカルが去った後、泉のほとりで一人 ミスティが 独白している。
(マリア…そうか、彼女が「マリア・アレックス」か…。本当に「ココア・ダークスター」にそっくりだな。
マカマカイきっての色事師である「ロキ・ミザール・アルコル」が 未だに口説き落とせないでいる人間の女。
「ミカル・ヒダカ」もまた マリア同様 口説き落とせない。彼女に「タケル」という想い人が居るからか?
満月の夜と新月の夜以外も ミカルにアプローチする気合いの入れようだ。
妻のユミコに飛び蹴りされようと 愛人のマリーや双子の兄のセトの横槍が入ろうと
たとえ どんな妨害があろうとも「浮気するのをやめない 懲りない 諦めない」なんて もはや 病気だろう…。
それに、ロキは「私に落とせない女はいない」と豪語するほど プライドの高い男だ。
障害があればあるほど闘志が湧くタイプだ。
それにしても、ロキが口説き落とせない女が二人揃って 私の下にくるとは…これも何かの縁か。
今度の新月の夜は、とても面白いことになりそうだな…)

ミカルとマリアが アン・ダンテの屋敷に戻ってきた時、3国のお姫様たちの迎えの者が すでに到着していた。
「みんな~、気をつけて帰ってね~。お家に帰り着くまでがパジャマパーティーだよ~…ムニャムニャ」
アン・ダンテは 定番の決まり文句を言って みんなをお見送りする。
「まったね~♪楽しかったよ~♪」「じゃ、また 次の新月に…」
「アクア、テティス…挨拶はその辺にしろ。「海の直通ルート」は そんなに待ってはくれないぞ」
アクアマリンとテティスの兄『トリトン・オーシャン・マリーナ』は みんなに会釈をすると、
アクアマリンとテティスと一緒に 海水で出来たゲートをくぐっていった。

「わぁっ!トリトン王子、カッコイイなぁ~!オイラと同じような声してるんだな~」
「バンブルさん!?」マリアは 乗り物に化けたタヌキ族「バンブル・ムジーナ」が居るのに驚いた。
「やぁ、マリアちゃん!置き手紙、読んだよ~!新月の夜までミカルちゃん家にお泊りするんだろ?」
「あの…、バンブル そろそろ セインティアに出発してほしいんだけど…」
サオリの兄『アンドロメダ・グローリア・セインティア』が バンブルを優しくせっついた。
「私 早く帰って もうひと眠りした~い」と、サオリが けだるそうに言う。
「じゃ、イナリ。オイラ 先に行くね!バンブルフライト!セインティアに向けて しゅっぱ~つ!」
飛行機のバンブルは アンドロメダ王子とサオリ姫を乗せて ドアを閉め バビュンと飛んで行った。
「おお!バンブル~!また後でな~!」
乗り物に化けたキツネ族の「イナリ・コンボーイ」が 飛び立つバンブルに向かって手を振った。

「最後はオラの番だ。マリア、メンドーサ隊の方は心配いらねぇだ。楽しんでくるだよ」
「イナリ殿、そろそろ…」「ああ、分かってるだ」
ウェルカム王国の騎士『フーガ・シルフィード』が イナリを促す。
「帰ろう、シッソナ姉様」「いつも お迎えありがとうね シンプル」
シッソナ姫の弟『シンプル・ウィズ・ウェルカム』と 姉弟の会話を交わすシッソナ姫。
「皆さま、ごきげんよう!またお会いできる日を 楽しみにしております!」
シッソナ姫お付きの侍女「ジミナ・モブリット」は 挨拶した後、イナリに乗り込んだ。
「それじゃ、みんな!出発するだよ!いざ!ウェルカム王国へ!」
イナリは シッソナ、ジミナ、シンプル、フーガの4人を乗せて 飛び立った!

クリーム色したメスのクマ「クマ・タイヨウ」が ぽつりと呟く。
「カフェ『エーアイ・カデン』にドーナツを納品したら ここでの仕事は終わりか…」
「あ!いけない!すっかり忘れてた!」ミカルが声を上げた。

ーつづくー





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