悲しみの果てに (中編)
- カテゴリ: 自作小説
- 2021/12/15 23:13:50
黒部の地方卸売市場は朝4時からセリが始まる。それまでに、漁を終え港に戻らなければいけない。乗組員は、午前1時に番屋に集まり出港する。港の出口に生地島橋が架かっていて、そのままでは船が通れない。
船から橋の管理人に携帯電話で連絡すると、307トンある橋が、片方のたもとを起点に、時計の針のように78度回...
黒部の地方卸売市場は朝4時からセリが始まる。それまでに、漁を終え港に戻らなければいけない。乗組員は、午前1時に番屋に集まり出港する。港の出口に生地島橋が架かっていて、そのままでは船が通れない。
船から橋の管理人に携帯電話で連絡すると、307トンある橋が、片方のたもとを起点に、時計の針のように78度回...
この生の悲しみとは 話すことができないということ 言われた、聞かれた言葉は 空気の上の空気でしかないということを 何も私に言わないで 私はあなたを愛しているから 黙っているときにも 私はあなたを呼んでいる セシリア・メイレーリス 1972
日本海から吹き付ける風が窓枠をガタガタと揺らし、雨粒が薄...
飛行機に雷が落ちるのは、珍しいことではない。飛行機自体が雷の発生を促し、アメリカだと飛行機一機あたり、年に一回は雷が落ちる。日本付近は、ヨーロッパ、北米東部と並ぶ雷銀座だ。冬の雷は、夏の数百倍の電荷エネルギーを持ち上向きに放電する。機体に損傷は生じたはずだが、飛行に問題がないように航空機には、二重、...
片桐は、ミーティングルームに向かいながら、腕にはめたブライトリングの文字盤を見た。ミーティングの開始が予定より、1時間遅れていた。待ちかねという顔をしたディスパッチャーが、気象図を示しながら、フライトプランの説明を始めた。
低気圧から伸びる前線が弧を描くようにして、本州にかかろうとしている。18時以...