【お話】いつか、どこかで。
- カテゴリ: コーデ広場
- 2018/10/25 11:59:46
いつか、どこかで。この森を歩いた。そんな気がする。
そのとき、誰かが隣にいた。
確かにそう思うのに、今のわたしには、何もなくて。
手にしたものが、何だったのかも思い出せない。
記憶のかけらが、こぼれ落ちてゆくのがわかる。
大切だったはずのものが、灰色になってひび割れて。
この手の中から消えてゆく。
...
ほんのり楽しい、まったり時間。そんな場所。
いつか、どこかで。この森を歩いた。そんな気がする。
そのとき、誰かが隣にいた。
確かにそう思うのに、今のわたしには、何もなくて。
手にしたものが、何だったのかも思い出せない。
記憶のかけらが、こぼれ落ちてゆくのがわかる。
大切だったはずのものが、灰色になってひび割れて。
この手の中から消えてゆく。
...
出前ですか? いつもありがとうございます。
お届け先は……天空の庭の東屋ですね。
ええ、はい。道案内をよろしくお願いします。いつもの小鳥さんですね。
ご注文は、パンケーキとミルクティー。わかりました。すぐにお届けにあがります。
さあ、さめないうちに届けないと。
小鳥さん、...
地上の話を、聞かせてくれる?
妖精の噂話って、あっちこっちに飛び回って、とりとめがなかったりするのだけれど、
でも、今のわたしには、これだけが、地上を知る手がかり。
わかっているの。
真面目に修練を積めば、いつか地上に降りられるって。
でも、少しでいい。
先にこの天空の城から旅立っていった、先輩の様...
むかし、妖精の歌声を聞いたことがある。
今よりずっと、小さかったころ。
ひとり森に迷い込んで、泣きそうになって、
座っていたら、かすかに。なぐさめるように。
歌声が聞こえた。
その声を聴いて、じっとしていたら、
探しに来た大人に見つけてもらった。戻ったら、しかられた。
次の日、もう一度森に入って、...
手にしたものは、
あなたが読んでいた詩集。
卒業した先輩の面影を、
今も、どこかで探している。
この静かな図書館で、たまにすれ違う、
わたしたちは、それだけの関係だった。
語ることはなく、
隣り合う事もない。
ただ、互いに本を手にして、すれ違う。
それだけの時間が、大切だった。
それだけの時間が、宝...