ひそやかな六月の雨が パステル画のやうに
森の緑を あわく にじませてゆくとき
濡れた青葉のひだに 風はオルガンを弾き
そらには やはらかな七色の虹がひろがる
それはいつか夢みた はかない記憶の色彩(いろ)
水色のひかりと 薄紅の雲のすきまを
ひとつの孤影が しづかに歩んでゆく
ふりかへることもなく...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
ひそやかな六月の雨が パステル画のやうに
森の緑を あわく にじませてゆくとき
濡れた青葉のひだに 風はオルガンを弾き
そらには やはらかな七色の虹がひろがる
それはいつか夢みた はかない記憶の色彩(いろ)
水色のひかりと 薄紅の雲のすきまを
ひとつの孤影が しづかに歩んでゆく
ふりかへることもなく...
激しい風が、輪郭を削っていく。
手のひらで冷たく冷え切っているのは、
ガラスの割れた古い懐中時計。
若く、無垢で、誰かを信じ切っていた
「過去の自分」の遺骸が、そこにある。
ねじ切れたリューズは、もう沈黙したまま。
午前四時五分。
選択を誤り、すべてを失ったあの瞬間。
嵐の咆哮は、
優しすぎた過去の...
街は熱を失わない
アスファルトが吐き出すため息
それがこの街の夏の夜だ蓄音機が重い腰を上げる
針が溝を削るノイズ
遅れてやってくる
シドニー・ベシェのソプラノサックスあの男の吹く音は太い
甘くはない
だが、胸の奥の傷口に
ちょうどよく染み込んでくる「サマータイム」金持ちのお子様は
温かいベッドで夢を...
夜はただの台帳だ
失ったものの数だけ
静かにページがめくられていく場末のバーの片隅
ベシェの「サマータイム」が流れる
ソプラノサックスの咽び泣きが
ひび割れた心に容赦なく滑り込んでくるあいつの吹く音は重い
まるで濡れたアスファルトだ
容赦のないビブラートが
消したはずの記憶を揺り起こすかつて隣にいた...
夜が明ける前の 深い闇のなかで
古いレコード盤が 静かに回りつづけてゐる
ビリーの歌ふ「奇妙な果実」の気だるい響きが
部屋の隅の 煙草の煙に溶けてゆく
遠い記憶のやうな青いよどみ窓の外を見れば 東の空がかすかに震へ
夜明けを告げる 暁(あかつき)の光が生まれる
私の心にあるのは
いつか異国の砂漠で見...