午前三時のバーボンは
喉を焼くというより、記憶をなぞる。
氷が溶ける微かな音は
かつて踏み外した階段の軋みに似ている。俺たちはみな、生まれた瞬間に
名前のない借りを作って生まれてくるらしい。
それが「原罪」なんて上等な呼び名なら
利息はとっくに、この街の雨に払いきった。「すまない」なんて言葉は
弾倉...
午前三時のバーボンは
喉を焼くというより、記憶をなぞる。
氷が溶ける微かな音は
かつて踏み外した階段の軋みに似ている。俺たちはみな、生まれた瞬間に
名前のない借りを作って生まれてくるらしい。
それが「原罪」なんて上等な呼び名なら
利息はとっくに、この街の雨に払いきった。「すまない」なんて言葉は
弾倉...
真夜中、体温計が38度を示した。
熱は嘘をつかないが、この身体も嘘をつく。
俺の血液銀行は倒産寸前だ。
白血球(やつら)はどこへ消えた?好中球は逃げ出した。
リンパ球はストライキ中。
俺の静脈は、たった数人の老兵が守る
人影のない防衛線だ。「さあ、来いよ」
喉の奥でくすぶる細菌(マフィア)どもに、
...
放課後の校舎裏は、いつも湿った土と
誰かが隠れて吸った安い煙草の匂いがした。
俺たちは、使い捨てのライターのように
火を灯す場所を探しては、空回りしていた。「遠くへ行こう」
隣で彼女が言った言葉は、
排気ガスに混じって消えた。
約束なんて、撃ち尽くした後の空薬莢(からやっきょう)ほどにも
価値がない...
窓の外は、すでに藍色の闇が降りてきております。
お盆の上に残されたのは、透明な葛に包まれた、一粒の餡。
それは、どれほど隠そうとしても透けて見えてしまう、私の本心のようでございました。私はその冷たい塊を、一息に飲み込みます。
喉の奥を滑り落ちる滑らかさは、逃れられない運命の感触に似ております。席を立...
空が茜色に染まり、街の影が長く伸びる時間でございます。
私は約束の場所、川沿いの古い茶房で、一人静かに座っておりました。運ばれてきたのは、宝石のように透き通った「琥珀糖」。
外側は薄氷のように脆く、内側は柔らかな光を閉じ込めた雫。
それは、かつて交わした、あまりにも純粋で壊れやすい約束の形をしており...