午前四時十五分。
雨の路地裏は、まるで底のない黒い沼だ。
お前の震える声も、すがるような視線も。
すべては激しい雨音のなかに、深く沈んでいく。お前は俺のすべてを売った。
たった三十枚の、冷たい銀貨のために。俺は一度も振り返らない。
お前がその場に崩れ落ちる気配だけが、背中に届く。
差し伸べられた手も...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
午前四時十五分。
雨の路地裏は、まるで底のない黒い沼だ。
お前の震える声も、すがるような視線も。
すべては激しい雨音のなかに、深く沈んでいく。お前は俺のすべてを売った。
たった三十枚の、冷たい銀貨のために。俺は一度も振り返らない。
お前がその場に崩れ落ちる気配だけが、背中に届く。
差し伸べられた手も...
なみは 無数の宝石のやうにひかる
なみは 無数の宝石のやうにひかる
けれど 夜の影がそれをひとつづつ消してゆく
けれど 夜の影がすべてを覆ひ隠してゆくゆくえを忘れた鳥が 一羽だけ
きらめきを失ふ水のまにまに 消えてゆく
色をうしなふ闇のゆくすえがあるばかりひと声の汽笛がひびいた
光をひき裂くやうな...
その一はるに近い あかるい夏日の夕暮れ
なみは 無数の宝石のやうにひかる
けれど まぶしすぎる光の海のうえに
黒い夜の影が そつと忍びよるゆくえを忘れた鳥が 一羽だけ
きらめきを失ふ波のまにまに 消えてゆく
さびしい心は なにもいはずに
ただ 色をうしなふ水のゆくすえを追ふそこへ ひと声の汽笛がひび...
I. 蛍の丘
雲はちぎれて空はみづいろに澄み
丘の小径をふりかへり見れば
草の葉末にちひさな火屋(ほや)がともる
風はなやかに木々の梢をゆするいつか失はれたあの日の約束が
もいちどめぐりくる季節のなかで
おもひでのやうに野辺をただよふ
かなしみを忘れたやうにまたたくああ それは過ぎし日の夢のあかし
...
静まり返った部屋_
鳥籠のなかの小さな羽ばたき。
レコードの溝を滑る針が、
あの物憂げなオルガンの音を、ぽつり、ぽつりと落としてゆく。
中折れ帽の庇を引き下げれば、
世界はただ、冷たい青の一色に染まる。トレンチコートの襟に顔を埋め、
寂れた路地裏の、濡れた石畳を歩いてゆく。
消えかけたネオン、遠くで...