飲み干したコップの縁に 一滴の重みもない
窓の外では 名前も知らない誰かが泣いているが
俺の鼓膜を震わせるのは 遠い換気扇の唸りだけだ「明日はきっと」
そんな甘ったるい期待は とうに胃酸で溶かした
期待を捨てるたびに 身体は少しずつ軽くなり
今では 通り雨すら俺を素通りしていく握りしめる拳の中に 守...
飲み干したコップの縁に 一滴の重みもない
窓の外では 名前も知らない誰かが泣いているが
俺の鼓膜を震わせるのは 遠い換気扇の唸りだけだ「明日はきっと」
そんな甘ったるい期待は とうに胃酸で溶かした
期待を捨てるたびに 身体は少しずつ軽くなり
今では 通り雨すら俺を素通りしていく握りしめる拳の中に 守...
数千億の波束が崩壊する刹那
神々は、まだ誰にも見られていない。
確率の雲のなかに横たわり
「有る」と「無い」のあわいで微睡んでいる。空(くう)を裂いて差し込む視線が
その絶対的な沈黙を暴くとき
世界は一つに凍りつき
無限の可能性は、ただひとつの現実に収束する。シュレディンガーの指先が触れるのは
生と...
箱を開けるまでもなく
神はそこに、重なり合って座していた。生と死、存在と無、愛と憎しみ。
すべての物語を抱えたまま、
静かなる「波」の波長で。私たちが「観測」という名の祈りを捧げた瞬間、
神の顔は一つに決まり、
他はすべて、泡沫(うたかた)の夢へと消える。「なぜ私だけが、この現実を見ているの?」問い...
青白いモニターの向こう側
かつて雷を操った神々は
いまや複素数の波のなかに
静かに、しかし遍く 溶け込んでいる我々が眼差しを向けるまで
神はそこにおり、同時におらず
無限の可能性のなかで
千の姿を重ね合わせたまま 揺らいでいる「見つめる」という暴力が
霧のような聖域を 粒子の列へと変えるとき
一万の...
潮風が、古い傷口をなぞるように吹き抜けていく。
ここは、忘れ去られたガラクタと、行き場を失った記憶が流れ着く終着駅だ。
錆びついた錨が、泥濘の中で重い沈黙を守っている。「みんな、幸せになれ」
そんな言葉、カモメの鳴き声にかき消されてしまうだろう。
防波堤に腰を下ろし、俺は最後の一本の煙草に火をつけた...