Nicotto Town


人に優しく。


  

覚めないで

センセイ、これ、夢ですか。

わたしは聞いた。

夢でしょうかねえ。

そうかもしれませんねえ。

センセイは愉快そうに答えた。

夢なら、いつ覚めるんでしょう。

さあねえ。

わかりませんねえ。

覚めないでほしいな。

でも夢ならいつか覚めましょう。

...

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かけがえのない人

窓を開ける。

八階です。

私たちの目の前にモスクワの街が広がっている。

空に花火のブーケがいきおいよく舞い上がる。

「すばらしいわ!」

「きみにモスクワを見せてあげるって約束しただろ。そして、祝日には一生きみに花を贈るって約束もしたよ」

ふりむくと、彼は枕のしたか...

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さようなら

小さな王子さまは、ちょっぴりさびしい気分になりながら、はえてきたばかりのバオバブの芽も抜いた。

ここへはもう、二度と戻ってくるつもりはなかった。

でもこの朝は、こうしたいつもの仕事が、いやに心にしみたのだ。

そうして、花に最後の水をやり、ガラスのおおいをかけてやろうとしたときには、...

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おれだけのひみつ

「どこが気持ち悪かったかね」

「おまえの気持ち悪いとこ? 百億個くらいあるでー」

「うん。どこ」

「百億個? いちから教えてほしいか? それとも紙に書いて表作るか?」

「いちから教えてほしい。気持ち悪いんじゃろ。どこが」

「どこがって、そりゃあ」

「うん」

...

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何かを愬えるように、直美はぼくを見ている。

ぼくはベッドの縁に手をついて、ビニールに顔を近づけた。

ぼくの身体の動きにつれて、直美の目が動いた。

その直美の目を見つめたまま、ぼくは息をつめて黙り込んでいた。

「あなたはいつも、黙り込んでいるのね」

直美の目が語っていた。...

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