Nicotto Town


人に優しく。


  

最後の駅

ピアノとバイオリンの音にあわせ、テレザは頭をトマーシュの肩にのせ、ダンスのステップを踏んでいた。

霧の中へと二人を運んでいった飛行機の中に二人がいたとき、テレザはこのように頭をもたれかけていた。

今、同じように奇妙な幸福を味わい、あの時と同じ奇妙な悲しみを味わった。

その悲しみは、...

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右腕

「片腕を一晩お貸ししてもいいわ。」と娘は言った。

そして右腕を肩からはずすと、それを左手に持って私の膝においた。

「ありがとう。」と私は膝を見た。

娘の右腕のあたたかさが膝に伝わった。





ー 『片腕』 川端康成 ー




 

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美しさ

彼女は言った。

「この世界はなんて美しいんだろうって思ってたのよ、イーベン。美しさのほかには何の役にも立たないのよ——あたしたちが今生きていようと、ずっと昔に生きていようと」

ぼくたちはあの美しさを共有していた。

決してそれを失うことはない。





ー 『ジェニーの...

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もったいない

「必ず、あなたはなおって、ぼくのお嫁さんになるんだ。どんなに長くかかっても、必ずなおってくれなければ困る。しかし、なおらなければなおらないで、ぼくは一生他のひととは結婚しませんよ」

信夫は初めて自分の想いをふじ子に告げることができた。

そしてほんとうに、この可憐なふじ子以外のだれとも結婚...

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崇拝

彼女はくるりと向うをむいて、窓にもたれた。

「ほんとに、わたし、そんな女じゃないの。わたし知っててよ、あなたがわたしのことを、悪く思ってらっしゃることぐらい」

「僕が?」

「そう、あなたが……あなたがよ」

「僕が?」と、わたしは悲しげに繰返した。

そしてわたしの胸は、う...

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