雨の高原にて ――不在のオルゴール
- カテゴリ: 小説/詩
- 2026/05/08 20:03:27
Ⅰ.雨の高原(プレリュード)雨は しめやかに 落葉松(からまつ)の林を濡らし
私の輪郭を 淡く 風景のなかに溶かしてゆく。
私は存在しない幻影、この高原の 霧のやうに
あなたの傘の すぐそばで 息をひそめている。(あんなに明るかつた 夏の日の午后は
どこへ 隠れてしまつたのでせう)濡れたベンチには...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
Ⅰ.雨の高原(プレリュード)雨は しめやかに 落葉松(からまつ)の林を濡らし
私の輪郭を 淡く 風景のなかに溶かしてゆく。
私は存在しない幻影、この高原の 霧のやうに
あなたの傘の すぐそばで 息をひそめている。(あんなに明るかつた 夏の日の午后は
どこへ 隠れてしまつたのでせう)濡れたベンチには...
Ⅰ.風のしらべ(序奏)風が吹いている、見知らぬ街の角で
私はそこにいないのに、私はそこに立たされる
淡いパステルの空に、一羽の鳥が消えるやうに
私の存在は、ただの「さよなら」の余韻にすぎない。(あなたは、私の肩に手を置こうとする
けれど、指先は夕闇をすり抜けてゆくばかり)それは しあはせな 幻影だ...
青い 玻璃(はり)の夜を 風がわたる
樹々の梢(こずえ)が さざめいて
見えない指さきが そつと
空の頁(ぺえじ)を めくつてゆく窓をあけて 待つてゐたのだ
おまへのやうな しづかな光が
庭の隅の ヒアシンスの影を
やはらかく なぞるのをああ 五月の月を ゼリーにして
銀のさじで すくへたなら!
...