寂れたシャッター街2
- カテゴリ: 小説/詩
- 2026/07/12 23:01:06
なにも見えない 暗闇のなかで
ただひとつ 鋭くひかる三日月のなかに
ぼくは 幻のやうな記憶を見てゐる
それは とうに失われた なつかしい日々の色彩閉ざされたシャッターの向かうから
こぼれてくるのは あたたかな誰かの笑ひ声
古い街灯のしたには 夕暮れのやうな人波がゆき
呼び交はす声が 優しく路地に満ち...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
なにも見えない 暗闇のなかで
ただひとつ 鋭くひかる三日月のなかに
ぼくは 幻のやうな記憶を見てゐる
それは とうに失われた なつかしい日々の色彩閉ざされたシャッターの向かうから
こぼれてくるのは あたたかな誰かの笑ひ声
古い街灯のしたには 夕暮れのやうな人波がゆき
呼び交はす声が 優しく路地に満ち...
さびしい色をした 鉄の扉がならんでゐる
昼のひかりも ここではとつくに色あせ
だれも訪れない うす暗い横丁のなかに
ただひとつ 冷たい風だけが 吹きぬけてゆく見あげれば 錆びついた看板のすきまから
ちひさな みかずきが そつと覗いてゐる
それは 遠いむかしに 忘れてきた
だれかの 優しいまなざしのや...
それは まつたく ひとつの約束のやうに
紫いろの夜が 街をひたしてゆくとき
ひそやかに レコードの溝から こぼれおちる
Betty Carter あたたかくも 鋭い歌声は舗道の石に ちいさな水たまりをうかべ
街角のカフェの窓には おもひでの灯がともる
ぼくらは ただ 風のなかで立ちつくし
過ぎ去つた...
Ⅰ
だれも知らない草の葉の
そのかそけき囁きのひびく処で
ぼくらはそっと息をひそめてゐた
夕闇のなかに風がそよぎだすのを遠い街のざわめきをよそに
ちひさな雲が夜の隅に迷ひこむ
きみの横顔はかすかに匂ひ
ぼくの心は千々に震へてゐたそのとき 静かな水のおもてに
ひとつのひかりが零(こぼ)れ落ちた
それは...
開け放たれた窓辺のむこう
夜の風がパステル画の雲を運んでゆく
ぼくは古い日記の頁をひそかに繰り
あの日、きみと息をひそめた秘密の場所を想ふ遠い街のざわめきをよそに
静かな河のおもてに零れ落ちたひとつのひかり
それは音のない、夏の日の花火の
かなしい追憶のはじまりのやうだったあかいひかり、あをいひかり...