一
だれも知らないみどりの森の
しづかな夜の ひかりのしづく
梢をぬらして あふれるものは
むかし僕たちがわすれた歌だおまへの髪に 月光(つきかげ)がふり
やさしい指が ともしびを消す
そのときかすかに 風のひびきが
ぼくらのまはりで 輪を踊るだらう二
青いあざみの しをれる蔭に
あまたの星の また...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
一
だれも知らないみどりの森の
しづかな夜の ひかりのしづく
梢をぬらして あふれるものは
むかし僕たちがわすれた歌だおまへの髪に 月光(つきかげ)がふり
やさしい指が ともしびを消す
そのときかすかに 風のひびきが
ぼくらのまはりで 輪を踊るだらう二
青いあざみの しをれる蔭に
あまたの星の また...
窓辺にのこされた 淡いパステルのきれはし
それはいつかの あかるい五月の雲の色
六月の雨は いま、ガラスの向こうで
小さな涙の雫を いくつもならべている机のすみに眠る 古びたオルゴール
ねじを巻けば かすれた音のつぶが
ひとつ、ふたつと 薄暗い部屋にこぼれて
失われた季節の 遠いひびきを連れてくるそ...
青いあじさいの毬(まり)のなかに
いつからか しずかに眠っていたのは
だれが落とした ため息だったろう
窓をたたくのは 銀の、細い、雨の指先五月がのこしていった あかるい風のうつわを
にわか雨が ひそやかに満たしてゆく
ぼくの部屋の 古びた机のうえ
ひらかれたままのノートは 白く、にじむばかり消えか...
青い光のなかを かすかに揺れて
風が僕の窓を たたきにくる
それはもう あの爽やかな5月ではなく
すこし重い 緑の匂いを帯びながら忘れてしまった歌を ひとつずつ
梢(こずえ)の葉が ひそやかに囁きあう
僕たちの過ごした いくつかの昼下がり
あれはすべて まぼろしの雲だったのか光のあわいに かすむ遠い...
風は ひそやかに 光をたたんでいる
あんなに眩しかつたみどりの梢に
いまは しづかな翳(かげ)がより添ひ
ひとつの季節が その幕を閉じようとしている僕のてのひらに残された あたたかな記憶
おまへの髪を揺らした あの日のはじまりの風は
いつしか 遠い物語のやうに
かすかなざわめきとなって 消え去ってゆ...