青い夜のすきまを ひそやかに満たしてゆくのは
むせ返るやうな あらくさの夏の香(かほり)だらうか
僕らは言葉をなくし ただ闇のほとりに佇んで
あつい息のなかに たがひの孤独をたしかめてゐる
月光にすかされた おまへのうなじを
ひとすじに伝ひ落ちる 銀の汗のきらめき
それは言葉にならない 祈りのやうな...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
青い夜のすきまを ひそやかに満たしてゆくのは
むせ返るやうな あらくさの夏の香(かほり)だらうか
僕らは言葉をなくし ただ闇のほとりに佇んで
あつい息のなかに たがひの孤独をたしかめてゐる
月光にすかされた おまへのうなじを
ひとすじに伝ひ落ちる 銀の汗のきらめき
それは言葉にならない 祈りのやうな...
ひとすじの青い、かなしみのやうに
夜の林の奥を ひそやかに流れる河がある
だれもそのゆくえを知りはしないのに
草の葉は かすかなその呟きをきいてゐる
樹々の梢が そっと夜空にひらいた窓から
あかるい月光がこぼれて 水の面(も)を濡らす
それは遠いむかしに失くした おまへのまたたく瞳
それとも僕が忘れ...
くらい草原に 雨がふりつづいている
それは しずかに光る銀色のつぶ
風のない午後の かすかな音楽のように
みどりの葉のうえに あわくこぼれて。わたしの目には いまも浮かんでいる
雲のすきまからこぼれた、淡い光が
遠い日の あなたのやさしい眼差しのように
さびしいわたしの心に 満ちてゆくのが。ひばりは...
岬(みさき)のまぶしき 太陽(ひかり)のなかを
ひとつの白帆(しらほ)が 遠ざかつてゆく
君と見上げし 眩(まばゆ)き空には
ただ入道雲(にふだうぐも)の 湧きたちて波のあひだを くだくる光は
いつも少しだけ 黄金(こがね)を帯び
忘られぬ あの日の言葉さへ
潮騒(しほさゐ)のなかに 収めたるままな...
石畳(いしだたみ) 濡れたる坂を
ひとり登れば 異国の薫(かお)り
海のひろが(が)る 崖(がけ)の上(へ)には
ただ群青(ぐんじやう)の 夜(よる)の迫りて遠き汽笛の 掠(かす)れたる声
船の灯(ともしび) 窓にまたたき
さよならの 代(か)はりの接吻(くちづけ)を
あの日 潮風(かぜ)に奪はれた...