短編「ルーズリーフ」
- カテゴリ: 自作小説
- 2010/12/24 01:21:23
「ルーズリーフ貸して」
「はい」
「さんきゅ」
僕らの交わした会話は、これぐらいにしか価値のないものだった。
でもあの時過ごした時間には、少しでもいいから価値があったと思いたい。
転入生として。
あいつは何故かふらっとこの町にやってきた。
なんていうかつかみどころがなくて、普段から何考えているんだ...
寝ることと食べることとぼやくことが好きな女子大生(いい響き)が、ありふれた悩みやしょうもないネタを大きな声で叫ぶ大喜利の場です。
「ルーズリーフ貸して」
「はい」
「さんきゅ」
僕らの交わした会話は、これぐらいにしか価値のないものだった。
でもあの時過ごした時間には、少しでもいいから価値があったと思いたい。
転入生として。
あいつは何故かふらっとこの町にやってきた。
なんていうかつかみどころがなくて、普段から何考えているんだ...
青年は、昼のあたたかい日差しが降り注ぐ公園の真ん中に腰を下ろした。
一般的に考えても彼は普通の人間であったし、彼もただ自然に地面へ腰を下ろしただけだったのだろう。しかし、静まり返っていた公園の中の子供達は彼のそれを合図にするようにざわざわと波を起こし始める。
それから間も無く、彼の周りには人だかりが...
辺り一面が美しい白銀に彩色された町並みの中、少年はただ一人歩いていた。
彼の周りにそびえ立つ木という木にはきらきらと光るイルミネーションが施されており、本来ならば暗いはずの夜道を明るく照らしている。
少年の足はまるで迷子のようにおぼつかず、行くあてもなくただぶらぶらと歩いているだけのようであった。
...
僕の足は、とある病院に向かっている。
理由なんてものはただの後付けに過ぎないと僕は思うのだが、実際のところは単純作業のごとく繰り出す足を止めるなんていう思想すら持ち合わせていなかった。
「お兄ちゃん」
彼女がそう、呼んでいる気がして。
「待った?」
僕にとってこの5分間は幸せな時間だった。
「うう...