由梨花は考える顔をしていたが、複雑な思考に耐えかねた。
「交通事故による当て逃げ事件じゃないの。」
この意見に伯母も頷いた。
「この画像から、車が男を跳ねたということが証明されますか。車は男の前で急停車をしている。もし、当て逃げだったら、スピードを落とさないだろう。警察の発表によれば、溺死体には...
由梨花は考える顔をしていたが、複雑な思考に耐えかねた。
「交通事故による当て逃げ事件じゃないの。」
この意見に伯母も頷いた。
「この画像から、車が男を跳ねたということが証明されますか。車は男の前で急停車をしている。もし、当て逃げだったら、スピードを落とさないだろう。警察の発表によれば、溺死体には...
女二人に慎一郎の三人で投稿ビデオの画像点検が始まった。菅原はルポライターを志すと決めた時、文章と映像をセットで整えることが必須と考えて、仕事を素早く仕上げるためにも画像修正ソフトを事前にパソコンに入れていた。
ダイニングキッチンから応接間に移動すると画素数の精密な大型ディスプレイに大学生の宮田雄...
私服の由梨花は美しく輝いていた。慎一郎はなるべく冷静に眺めようと思った。気持ち的に引き締めておかないと、この女はいきなり抱き着いてくるかもしれないという警戒心が先だった。
「今日は急いで出ていったわね。これコーヒー代のおつり。」
こう言って、由梨花は小銭の入った封筒を慎一郎に渡した。
「ありがと...
菅原慎一郎は夕方の五時頃、伯母の家に戻った。陽が沈まない内に帰宅するのは珍しいことであった。彼は大学生の古宮雄太からのメールを待っていた。ユーチューブにアップしなかった未公開画像を詳細に検討するために3万円で買ったのであった。この理由は、理屈よりもルポライターとして何か掴み出せないかという焦りに似...
アルバイトの女性がレジイーで大きな声を出したものだから、店長の由梨花はカウンターから顔を上げた。「一人で座っていた男の人が、急に駆け出していったから。」「ああ。慎一郎さんね。ほっといたら、いいよ。」「店長のお知合いですか。」 興味ありそうに聞き返した。「まあね。」 こう返事をすると、由梨花は堪え切...