Nicotto Town



自作小説倶楽部12月投稿

『彼女の微笑みと鴉』

年の暮れ、駅前には行き交う人々が途切れることは無く、寒波にもかかわらず活気で気温が上昇しているようにすら感じられた。地上を歩く人々はそれぞれの道を急ぎ、ひとつのビルの屋上につながる扉が開いたことに気付く者はいなかった。
「寒ぃな」
先頭の男が扉を開けると背後にいた男は彼を押し...

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自作小説倶楽部9月投稿

『セイギの味方』

「わたしはアイドルになりたかったわ」
「へえ、意外。白木さんは大人しそうなのに」
「歌って踊りたかったのじゃないわ。フリルの付いたドレスを着てみたかった。そう言うスタイルのアイドルがいたのよ。童話のお姫様みたいに可愛い彼女がうらやましかった」
「格好から入るのかな。あこがれっ...

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自作小説倶楽部8月投稿

「ある夫人の肖像」 これが『Y夫人の肖像』です。私の若い頃の作品です。まだ20代の売り出し中の画家でした。避暑地で金持ちの肖像を描いて日銭を稼いでいました。あの頃は写真など無粋で絵画に家族の姿を残すことが金持ちのステータスのようになっていました。わずかな金を払って芸術家のパトロン気取りです。金を手っ...

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自作小説倶楽部7月投稿


「夜空を歩く」
  その人は母の従妹に当たる女性だったそうです。
  最初にその人を見たのは私が何歳の頃かは覚えていません。毎年、お盆に母の祖父母の家を訪れると、ああ、またいるな。と彼女の姿を目に留めたものです。
  彼女は蔵の脇の日陰に立っていました。昔...

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自作小説倶楽部6月投稿

『姉の恋』

「彼と別れるわ」
 姉は予想通りの言葉を吐いた。意味もなく細い指でストローの曲がり角をつまんでアイスコーヒーの氷を一回転させる。
 これで何度目のことだろう。僕は内心ため息をついた。
 大きな瞳がふたつ、卵型の顔の中できらりと輝く。少しカールした栗色の髪に染み一つない肌、服装はゆっ...

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