伝えたい言葉4 中編
- カテゴリ: 自作小説
- 2011/06/06 01:17:58
コホン。
今まで、綾奈の一歩後ろで成り行きを見ていた黒川の咳ばらいが聞こえてきた。そこで初めて綾奈は黒川の存在を思い出した。
(そうだった。二人きりじゃなかったんだ。)
それまで空気に徹していた黒川だが、話が余りにも違う方向に進んでいるのを見かねたのか、声をかけてきた。
「会長、話が逸れて...
コホン。
今まで、綾奈の一歩後ろで成り行きを見ていた黒川の咳ばらいが聞こえてきた。そこで初めて綾奈は黒川の存在を思い出した。
(そうだった。二人きりじゃなかったんだ。)
それまで空気に徹していた黒川だが、話が余りにも違う方向に進んでいるのを見かねたのか、声をかけてきた。
「会長、話が逸れて...
「すまないねぇ。仕事中に呼び出したりして。」
そう言って口火をきったのはこの部屋の主である滝野毅だ。
「いえ。店長の許しも出ましたし、それはいいんですけど…。」
胡散臭そうに言葉を返す綾奈に毅は満足そうに頷いた。
「私は滝野毅といって、この滝野財閥の一応、会長をさせてもらって...
「あの、もう一度おっしゃっていただけますか?」
昼。
いつもならコンビニでバイトをしているはずの綾奈が何故か夜のバイト先である滝野コーポレーションの10階、しかもこの滝野財閥会長の部屋にいるのだ。
いつものように諒一と叶斗、二人の弟を送り出しコンビニでバイトを始めて1時間ばかり経ったころだ...
逃げられたか…。
営業一課のフロアから去っていった綾奈の背中を見送りつつ、雅也は心の中でそっと呟いた。
(澤井さんのことが気になり始めたのはいつのころからだろうか?)
そう自分の内に問いかけてみる。
正直『分からない』というのがその答えだった。
小さい頃から自分を着飾っ...
「…しい?」
どれくらいの時間だろう。そんなに長い時間ではないように思うがぼぉっとしていたのだろう。気が付いたら綾奈の目の前で雅也が手をかざしている。
「え?」
「俺がこのフロアからいなくなるのを、少しは寂しく思ってくれているのかなって聞いたんだけど?」
どきっとした。
心...