「契約の龍」(147)
- カテゴリ: 自作小説
- 2010/01/18 11:03:20
「この廊下の向こう側が、王太子宮」
王宮と王太子宮をつなぐ渡り廊下は、空中――階層でいえば、中二階…中三階、というべきか?――にあった。
「下にも通路はあるけど、吹きっ晒しだから」
下の出入り口、というのは、夏に使ったものだろう。そして、設計上の都合か、警備上の都合か、渡り廊下...
ぶろぐ、の、ようなもの。
「この廊下の向こう側が、王太子宮」
王宮と王太子宮をつなぐ渡り廊下は、空中――階層でいえば、中二階…中三階、というべきか?――にあった。
「下にも通路はあるけど、吹きっ晒しだから」
下の出入り口、というのは、夏に使ったものだろう。そして、設計上の都合か、警備上の都合か、渡り廊下...
その朝、王都は厚い雲がもたらした雪に包まれていた。…それも、――風こそないものの――めったにない大雪に。
「…クリス。無意識に使う魔法は、強力だけど厄介だ、って教えたわよね?」
窓の前で茫然と外を見る俺たちの背中へ向けて、クラウディアの苦りきった声がかけられる。ちな...
軽くこめかみを押さえて溜め息をつく。
「あーなるほどね。…撫でて気が落ち着くんだったら、思う存分どうぞ。その代わり、こっちが我慢できなくなったら遠慮はしないからな」
「思う存分、って……」
クリスが苦笑する。
「そう言われて早速手を伸ばせると思う?...
ベッドの端から体を乗り出して、クローゼットの中を漁っていたクリスが、何か小さなものを取り出した。
「…何?」
「昨日、届いたんだ。いろいろあって、忘れてた」
取り出した物は小さな箱だった。手のひらに載るほどの大きさの木箱で、すべての角が丸められている以外、これといった装飾は無い...
クリスの意識がここにあるうちに探れないならば、クリスが「潜った」後でもいいか、と思ったんだが、それもお気に召さないらしい。
だが、「遮蔽」を消すのにどれだけ時間がかかるか判らない、というのも……一緒に居られる時間はそんなに残っていないというのに。
「クリスが嫌がるな...