9月自作/〇〇の秋『まつり 2』
- カテゴリ: 自作小説
- 2012/09/19 23:26:44
白那=しらな と読みます。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
圭一がプルトップを開けて手渡すと、
「うれしいねぇ」
にっこりと笑みながら喉を鳴らす。
「変な女だな」
「そうかい?」
「ビールなんて珍しくもない。こんなものがそんなに嬉しいのか」
この日から、ビール片手の奇妙な逢瀬が始...
ぺんぎんの飼育法とかうどんの通販をやってるワケじゃありません
白那=しらな と読みます。
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圭一がプルトップを開けて手渡すと、
「うれしいねぇ」
にっこりと笑みながら喉を鳴らす。
「変な女だな」
「そうかい?」
「ビールなんて珍しくもない。こんなものがそんなに嬉しいのか」
この日から、ビール片手の奇妙な逢瀬が始...
タン、と床板が軽く踏み鳴らされたのを合図に、細くのびやかな神楽の囃子が流れ始めた。
拝殿の中央で、白い着物と白塗りの面をつけた若者がゆるりゆるりと舞いながら、囃子の調子に合わせてしゃんしゃりと鈴を鳴らす。
厳かな空気。
秋の祭だ。
圭一は境内の隅で石台に腰掛け、ビールの缶を揺らしながら呟い...
シリーズタイトル『からんころん』 3
★☆★☆★☆
「私、この公園通るの嫌い」
若い女性が、並んで歩いていた男性の腕を握りしめて囁いた。
「夜になると子供の歌声が聞こえてくるのよ。誰もいないのに。
「ふぅん」
「本当よ。残業で遅くなった時に聞いたことがあるの。近所の人も聞いたって噂してた...
家の中でも、開け放した窓の外からも、聞こえてくるものは風に弄ばれる葉擦れの音と、姿を見せない鳥の鳴き声。そして私道を少し下がった川のざわめき。
四歳のこの夏まで街しか知らなかった千代には、何もかもが珍しかった。庭に広い野菜畑があり、縁側の先に井戸のあるこの家も、道に出て十分、二十分と走れどすれ違...
「千代!」
母親は目尻を吊り上げて叫ぶと、足元の何かを掴み投げつけた。
母親のした事の意味が解らずに千代が『え?』と振っていた手を止めると同時に、すぐ隣で布を引き裂くような甲高い叫び声が上がった。母の投げつけた何かが男の子に当たったのだ。
母親が駆け寄って千代の手を引っ張る。
なぁぜ? なぁ...