Nicotto Town


しだれ桜❧


 

刻の流れー83

昨夜ぴかぴかに磨き上げ、新車同然で横浜の客人たちに渡した黒のクラウンの変わり果てた姿に原田は眉間にしわを寄せ本田を睨みつけた。右後ろのタイヤハウスから後ろのバンパーまでどう運転したらこんな傷が付くのか、引っかき傷にブロック塀に当てたようなヘコミが何箇所かある。原田の口からため息が漏れる。車の前にしゃ...

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刻の流れー82

「実はな・・・」
一呼吸置いて頭にとんでもない言い訳を浮かべた。
「実は・・・犬飼さん、東京で代議士妻と浮気したんがばれてもて神戸に逃げてきたんや。ほんなら昨日の晩追いかけてきた旦那に見つかってもて、殴られたんや・・・」
とまじめ腐った顔で言う。期待に胸を膨らませてじっと聞いていた華里奈は急に噴出し...

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刻の流れー81

犬飼に変装した要と入れ違いに病院の正面玄関から華やかな風が飛び出してきた。
「お待たせ、アキラくん。」
ナースの華里奈である。白地に大きなヒマワリ柄のサマードレスを着た彼女はびっくりするほど可愛い。今まで白い看護服姿の彼女しかみた事がないアキラはドキッとした。
「おなかすいちゃった。何にする?」
「...

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刻の流れー80

正面玄関から外に出てくるアキラの姿を通り向かいのビルの3階から双眼鏡が追っていた。
「ターゲット発見。」
男がつぶやく。それに反応してもう一人の男が目をこすりながら奥から窓際へ出てきた。
「どいつだ?」
ブラインドの隙間から入る明かりに照らされた男達は鈴木と川崎である。
「確かルポライターに同行して...

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刻の流れー79

一刻も無駄にしたくない。要はすぐに、井上医院へ向かった。院長に事情を説明して、口裏を合わせてもらうためである。犬飼たちが横浜から神戸に逃れてきた経緯を承知している井上院長は何も言わずににやりと笑った。案外この医者もハードボイルド好きなのかもしれない。年配のナースを一人呼んで、てきぱきと病室を一つ用意...

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