自作小説倶楽部5月投稿
- カテゴリ: 自作小説
- 2020/05/31 21:55:47
『昭和怪談』
ビール? おお、ありがとうよ。冷えてるねえ。仕事で疲れた時はこの一杯が生きがいだよ。あれ? 仕事に集中しすぎてたな。いつの間にか俺一人で残業していたのか。置き去りかよ。みんな冷たいなあ。田中の奴、挨拶も無く帰ったな。田中ってのは俺が指導を任された新人だよ。社長の甥だか、イトコの息子とい...
『昭和怪談』
ビール? おお、ありがとうよ。冷えてるねえ。仕事で疲れた時はこの一杯が生きがいだよ。あれ? 仕事に集中しすぎてたな。いつの間にか俺一人で残業していたのか。置き去りかよ。みんな冷たいなあ。田中の奴、挨拶も無く帰ったな。田中ってのは俺が指導を任された新人だよ。社長の甥だか、イトコの息子とい...
『ある一族の野望』
娘のほうは、まあ、少しはいいなと思ったんだ。一族の悲願のためとはいえ、こちらは財産目当てだから醜女と結婚することも覚悟していたんだ。それが、笑うとなかなか美人で、話して見れば嫌味もなく頭もいいし、贅沢もしない。いつか彼女と僕の一族の故郷に旅行しようと約束したんだ。それがだ。突然...
『小さな女王』
両親が死んで俺がお屋敷に取り残されたのは12歳になった年だった。父は旦那様の秘書だったこともあり、身寄りのない俺は、そのままお屋敷の使用人たちに育てられることになった。俺に最初に与えられた仕事は一つ年齢が下のお嬢様の話し相手と言われたが、実際はカナリアの代役だった。
ちょうど...
『図書の守護者』
書架の間を数珠や御札を手に行き来していた下級生たちを追い出し、カウンターの内側の定位置に戻ったが読書を再開するには心がささくれてしまい、諦めて本を閉じた。
「また、幽霊探しの子たち?」
学校司書の高杉さんがにこにこと笑いながら言った。その手は古い蔵書目録をめくっている。わたしは...
『彼女が美しかった頃』
高校の時の古典の教師は山ババアと女生徒たちに呼ばれていた。苗字は山本か山田で、下の名前も「子」が付く地味なものだったと思う。覚える気もなかったから忘れてしまった。当時の年齢は30代だと聞いたが、10代の私たちにとっては遠い未来の年齢だった。外見もチビで小太り、肩の少し上で切...