Nicotto Town


しだれ桜❧


 

刻の流れー78

その朝東京へ向かう犬飼を見送った要とアキラは環の部屋で三人頭を突き合わせていた。円座を組んだ真ん中に、ポテチやソーダ缶が乱雑に置かれている。
犬飼の指示は
「ひろみを探して助け出す事」と「奴らの注意を神戸にひきつけておく事」
の2つだ。それだけ信頼されているのは嬉しいのだが、指示が漠然としていて、ど...

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刻の流れー77

3時間あまり列車に揺られ、犬飼は東京駅に着いていた。10日ぶりである。冷房の効いた電車からムッとするホームへ降りると犬飼は素早く公衆電話を探した。神戸から昼過ぎには東京へ着くと電話を入れた際には編集長は昼頃まで出かけていると言っていた。もう事務所にいるだろうかと思い、東京に着いて真っ先に電話したのだ...

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刻の流れー76

犬飼とアキラは三宮駅から北へ向かって歩いていた。二人はアキラが聞いた要の住まいを訪ねる気になったのだ。教えられた『近くにあるホテル』は意外と簡単に見つかった。
「俺の家は解りにくいんだ。ホテルのフロントで名前を言ってくれれば会いにいくよ。」
と要は言っていた。まさかこのホテルに住んでいるとは思えない...

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刻の流れー75

「アキラ、おまえと友達の要って子に頼み事があるんだが・・・」
唐突な頼み事にアキラは返答に困った顔をした。
「すまん、頭で考えてたことをそのまま言っちまったな」
しかしアキラは話を聞こうと自然と身を乗り出していた。犬飼は頭の中の考えを言葉にするため整理しようと、咳払いをした。
「まず、ひろみは無事だ...

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刻の流れー74

体のあちこちが痛い。頭がズキズキする。板の間で毛布をかぶって寝ていた犬飼は朝の冷え込みの中で目が覚めた。周りを見渡すと、そこは薄暗い見慣れない部屋で、どこからともなくかすかな酒のにおいが漂ってくる。痛む頭で記憶を辿る。そうだ、昨夜ひろみの病室の窓から外に脱出したんだ・・・。
「確か車椅子を押して・・...

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