Nicotto Town


しだれ桜❧


 

刻の流れー73

斎藤は深夜のホテルの一室で明かりも付けず電話を放心状態で見つめていた。窓から神戸の町の明かりが僅かに差し込んでくる。夕方田中からの命令をまさにこの電話で受けたとき、待ちに待ったチャンスが漸く手の中に転がり込んできた事を歓喜した。それがもう何週間も前の出来事ように思える。ルポライターと手負いの女を捕え...

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刻の流れー71

新神戸で本田たち3人を難なく拾った原田は、10分後、再び井上医院の駐車場に戻ってきた。入り口に斎藤が待ちかねた様子で立っている。いかにも人を待っている風のその様子に苦笑しながら原田はクラウンを近くの駐車スペースに停めた。
「ご苦労」
降りてきた原田に斎藤が声をかける。
「梶から車はお貸しするように聞...

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刻の流れー70

井上医院はラ・パルフェから車で10分ほどの距離にある。車中の斎藤は、はしゃぎすぎとも言える勢いで田中に選ばれた自慢話をしゃべりつづけ、原田には医院までの道のりが2時間にも感じられた。医院の駐車場にクラウンを停めた原田は心底解放されたと思いつつ後部座席の斎藤に声をかけた。
「着きました」
原田の言葉で...

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刻の流れー69

原田が5階から降りてくるのを待つ間に、斎藤はなんと言っても、自分が指揮官になるのだから横浜から来る男たちに事前に連絡を入れるのがいいと思った。
「ちょっと電話を貸してくれ。」
と、梶に頼む。別に断る理由もなく、梶は一歩下がってカウンターにある電話機を目で示した。田中がFAXで知らせてきた本田のポケベ...

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刻の流れー68

神戸のホテルに滞在する斉藤の部屋の電話が鳴り、部屋の主はたたき起こされた。眠い目で時計を見ると夕方の5時前だ。こんなに眠っていたのかと受話器を取る。それは田中からの電話であった。
「状況が変った。お前はルポライターを捕らえろ。」
前置きはない。単刀直入である。
「は?」
喉から手が出るほど願っていた...

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