自作小説倶楽部5月投稿
- カテゴリ: 自作小説
- 2017/05/31 21:40:45
「田植えの風景」
立夏も過ぎ、黄金週間も明けると有給も使って一週間の休みを取った。職場の先輩に「が以外旅行に行くの?」と聞かれたので「祖父の棚田で田植えです」と正直に答えると呆れた顔をされた。お休みは旅行の方が普通なのだろうかと思いつつ帰郷したが、久しぶりに昔なじみの顔を見ると些細な悩みなんて...
「田植えの風景」
立夏も過ぎ、黄金週間も明けると有給も使って一週間の休みを取った。職場の先輩に「が以外旅行に行くの?」と聞かれたので「祖父の棚田で田植えです」と正直に答えると呆れた顔をされた。お休みは旅行の方が普通なのだろうかと思いつつ帰郷したが、久しぶりに昔なじみの顔を見ると些細な悩みなんて...
『越えてきたもの』
終わらない。終わらない。
俺はつぶやいたそれがもう声になっているかもわからない。
俺は白い山を登ろうとするが足元の書類は見る間に崩れ落ちて上ることが出来ない。いくつもの山を越えてきたというのに山はどこまで続いているのかわからない。
「ヤッホーーーー」
必死の俺の耳に呑気な声...
『私が死んだ日』
「私が死んだ日のことを教えてください」
ウェイトレスが立ち去るのを待って、そう言った少女はあの日と同じ姿をしていた。紺のセーラー服に長い三つ編み、後ろで1つに編んだ髪を右肩に垂らすところまで記憶の通りだ。胸には〈西野〉という小さなプレートが付いている。
「その前に君は彼女の...
『鬼ごっこ』
いーち、にーーい、
悪夢の中、私は走っていた。
一斉に走り出した子供たちはどこに逃げたのか、もうわからない。
ひとりぼっちで、自分だけで逃げ切らなくてはならない。子供の私は身体も小さい。当然足だって遅い方だ。
鬼は私を狙っている。誰も私を助けてはくれない。本当はこんな怖い遊びはしたく...
『エクシー』
あれは僕がまだガウェインから見下ろされるような背丈の子供だった頃です。ガウェインというのは父が飼っていたボルゾイ犬の名前で、時々僕を鼻でつついたり押したり、自分手下だと思っていたようです。当時は父が海外で長く仕事をしていて、母は社交で忙しく。僕の世話は家庭教師のミス・ルートと数人...
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