Nicotto Town


しだれ桜❧


 

刻の流れー67

弁当屋の袋を下げてアキラが所在無げにロビーのベンチに座っていた。医院では患者の夕食給仕のばたばたが一段落したところだ。休憩に入った若いナースが一人ロビーを通りかかり
「あ・・・103号室のひろみさんとこの、えっと、アキラ君でしょ?」
とアキラに声をかけてきた。アキラが先週犬飼たちと共にここに来た時か...

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刻の流れー66

情報室の秘書を一人連れ、田中はルポライターに関する新情報を伝えるべく部隊員の集まるジムへ自ら足を運んだ。精鋭3名を直ちに神戸に送り込め、それまで指揮をとっていた情報部室長は部隊長罷免、斎藤が替わって指揮をとると田中は言った。支配人直々の来訪に隊長の豊田はこの件に関する本部の並々ならぬ入れ込みを否応無...

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刻の流れー65

店に戻った梶は5階のビデオ室に直行した。中で作業していた男達が手を止め会釈する。それを無視して、モニターの一つを調整し、表のホテルの一室を映し出した。中で男が一人ドロのように眠っている。斎藤だ。
横浜の資料はもともと、神戸店がまとめ、送った物を元に作られている。その二つのデータが相違するはずがない。...

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刻の流れー64

遂に婦長に放り出された要とアキラが建物の前で談笑している所に梶が興津の着替えを持ってやってきた。梶に気付いた要が軽く頭を下げる。梶はそれに目だけで答えた。
「要にしては珍しい。」
と、思いながら二人には声をかけず玄関のガラス戸を通って建物の中に入る。原田に教えられた病室のドアをノックをすると少しして...

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刻の流れー63

近くのハンバーガーショップで軽い昼食を済ませた後、要は手持ち無沙汰で興津の病室と待合室を行ったりきたりしていた。
「バイク雑誌でも持って来ればよかったな。」
本屋に買いに行こうかと思いをめぐらしている所に廊下の向こうから若い女を車椅子に乗せて男が二人歩いてきた。すれ違うまでお互いに気付かなかったのが...

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