自作小説倶楽部8月投稿
- カテゴリ: 自作小説
- 2016/08/31 22:08:47
『夢見る人魚』
「う~ん。美味しい。磯の香りがするね」
目の前で彼は大きなフォークとナイフを使い食事をしている。白いテーブルクロスに覆われた丸いテーブルの向かい側にあたしが座っていた。何を食べているのだろう。少し気になったがあたしはあくびをした。やばい、高校の朝礼でもないのにこのまま寝てしまい...
『夢見る人魚』
「う~ん。美味しい。磯の香りがするね」
目の前で彼は大きなフォークとナイフを使い食事をしている。白いテーブルクロスに覆われた丸いテーブルの向かい側にあたしが座っていた。何を食べているのだろう。少し気になったがあたしはあくびをした。やばい、高校の朝礼でもないのにこのまま寝てしまい...
『彼は宇宙人』
「実は僕は宇宙人なんだ」
彼の突然の告白にあたしは反応を忘れて停止し、食べようとしていたアイスはスプーンから零れ落ちて喫茶店のテーブルクロスにしみを作った。
「えっと、それはどういうことかな」
目の前の彼は中肉中背という体形で、黒髪黒目、一重まぶたで凹凸の少ない顔立...
『薔薇泥棒たち』
「あの無智蒙昧、不智不徳、無風流な連中には花一輪の美しさ、その中の生命の神秘、品種改良を重ねた数千年の先達たちの偉業を全く理解していない。感じることすらできないんだ。警官どもも口では怪しからんと言っておきながら高が花なんてと思っていることが丸わかりだ。今朝なんて捜査の進展を聞...
『霧の中』
男が扉を開けると乳白色の世界が目の前を覆った。
一瞬戸惑い、それが濃霧であることに気が付く。
〈山の近くではあるけど何なんだ。この霧は。〉
玄関の照明を消す前に腕時計を確認する。午前4時すぎ、もうそろそろ夜が明ける。車の鍵をしっかり握り、足元を確認しながら駐車場に向かう。今出て来た...
『桜の下の殺人』
(1) 「死体が埋まっているんです」
女がぼそりと言った。
「その場所はわかりますか? 」
老巡査は女を観察しながら言った。酒に弱いのか自分で節度を守りながら呑んでいたのか、あまりアルコールの臭いはしない。会社の花見でここに来たらしく暗めの色のパンツスーツで眼鏡をかけている。...