Nicotto Town


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日日是悪日

「いとし、かなし、いとはかなし」

「離さない」 知らなかった。この人が途方もない激情を体の内に飼っていたなんて。自分を抱き締める腕の強さにそれを知る。「……うん」 肩越しに藤の花房が青く揺れてにじむ。甘く薫る風に、伝えたい言の葉はさらわれてしまった。だから、耳許で囁かれた求めてやまなかった五文字ごと、目の...

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#私が恋人に求める五大条件

 いつかはバレるだろうと思っていた五股がとうとうバレた。 自称恋人達はこぞって自分と結婚しろと捲し立てる。さて、どうしたものか。穏当に四人の男に諦めてもらうべく、ここが正念場、腕の見せ所である。
〝では、私のほしい物をいち早く用意できた人と、そのまま結婚しましょう〟
 淑女のほほ笑みを忘れずに提案す...

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「いますぐここに流れ星」

 祈るという行為の残酷さに、大人になってから漸く私は気付いた。 一人で来る夜の海は昼とはうって変わって黒く禍々しく、ここが何度も訪れた優しい思い出の場所とは到底思えない。対岸には人口の明りがまばらに涙のように小さく煌めいた。 昔、私の大切な人は度々ここに足を運んだ。真夜中、一緒に流星群を見に来たこと...

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「影踏む恋」

「蒼志郎様、肖像画が届きました」 丁寧なノックを重ね慇懃に入室した執事の荻原(おぎはら)が、待ちに待った贈り物の到着を報告した。「そうか。では飾る前に此処に」 それに対していつも通りの指示を出す。「承知いたしました」と恭しく頭を下げて荻原が退室してややもせず、清潔な白い布にくるまれた肖像画が自室に運...

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「空の色さえちがう場所」

 空はつながっているよ、とは言うけれど。

 律哉がもっとピアノを学ぶべくヨーロッパへ留学してから三ヶ月が経った。季節が一つ、くるりと変わるほどの時間だ。たとえ異国の地でも、少しは新しい空気に慣れただろうか。実は私は、律哉のいない日々にまだ順応できていない。
「海外に行く」 三ヶ月前、壁が薄く防音が...

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