Nicotto Town



自作小説倶楽部6月投稿

「依頼人」
母がおかしくなったんです。元々しっかりした人でシングルマザーになったのも余程の理由と決意があったのだと子供心に察せられる雰囲気がありました。それでも、時々寂しそうで、私は少しでも母の慰めになろうと勉強や家の手伝いを頑張りました。やっと七歳になる私に母は学校で上手くいっているか、先生は頼り...

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自作小説倶楽部5月投稿

『記憶の大樹』
事が起きたのは6月の文化祭だった。僕の絵が盗まれたのだ。放課後に片付けのために集まった部員たちは渦巻き状の金具に残された切れ端を見つめ呆然としていた。美術部の部室に作品が展示される中、僕の絵だけがスケッチ帳から破り取られていた。教室内にいた生徒や父兄の誰も気づかぬ犯行だった。美術部と...

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自作小説倶楽部4月投稿

「黒猫と少女」
は、いけない。いけない。あたしは、窓ガラスに息を吹きかけると雑巾で拭いてゆく。窓の外には重い灰色の空が立ち塞がっていて恐ろしいように感じた。目をつむりそうになって首を振り、作業を続ける。死んだばあちゃんに「お前はぼんやりだ」と随分注意された。ばあちゃんが死んで働きに出て何年だろう。ぼ...

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自作小説倶楽部3月投稿

『マリア』
マリアは私のあこがれでした。蜂蜜色の髪に瑠璃色の瞳、そして白い肌。彼女とお茶をすれば狭い畳の間も豪華な宮殿になったり、おしゃれな邸宅になりました。私とマリアは花びらのお茶を飲み、おしゃべりをして、時々絵本を読みました。一番楽しかったのはマリアの衣装合わせです。古い型だったけどマリアはたく...

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自作小説倶楽部2月投稿

『疑惑の手紙』
うつくしい思い出はまだ貴男の中にあるのでしょうか。そばにいられなくても貴男の血のつながった娘さえいてくれれば幸せだとおもい生きてきました。しかし私の命はついに死病に侵され春を見ることなくつきることになりそうです。心残りは娘のことです。いとしい娘はまだ子供です。かつての私のように世間の...

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