想いで——東方の浜に寄せて2
- カテゴリ: 自作小説
- 2026/08/26 10:15:53
それは 黄昏の薄紫の影から
三日月の細い刃が 天空を切り裂く時
潮騒に紛れて 静かに零れ落ちる
星の欠片を 砂丘に探す旅人のように東方の浜辺には 冷ややかな風が吹き
波頭は銀色の光を纏って 砕け散る
僕はただ独り 夜の始まりに立ち尽くし
お前と見上げた 遠い夜空の記憶を辿る欠けた月は 去り行く季節の...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
それは 黄昏の薄紫の影から
三日月の細い刃が 天空を切り裂く時
潮騒に紛れて 静かに零れ落ちる
星の欠片を 砂丘に探す旅人のように東方の浜辺には 冷ややかな風が吹き
波頭は銀色の光を纏って 砕け散る
僕はただ独り 夜の始まりに立ち尽くし
お前と見上げた 遠い夜空の記憶を辿る欠けた月は 去り行く季節の...
あんなに雪が降つてゐた 北へ向かう夜に
私はただ ひとつの失つた名前をよんでゐた
狭い二段寝台の あかりを消した暗闇で
切なさは すきま風のやうに胸をぬけてゆくいまはもう消えてしまつた あの汽車の青いカーテン
誰もいない通路の かすかな白熱灯のひかり
すべては昭和の 遠い幻だつたのだらうか
私の涙の...
あかるい窓を ひらいておけば
五月の風は ひたひたと満ちて
机のうえの ガラスの瓶に
青い火をともす 花があったそれは うたをうたふには
あまりに しづかすぎる色をして
過ぎゆく時間の きらめきのなか
誰かの溜息を 吸ひこんでいる忘れたいことが あるわけではなくて
ただ おぼえていることが かなしい...
だれも乗せない しずかな鋼(はがね)のからだが
風に吹かれる 草の海をゆらしてゆく
銀のレエルは 天の河へと つづいて
星屑を ひとつぶずつ 窓辺にこぼした石炭の火は 遠いむかしの 夢のなごり
錆びたバルブは やさしい溜息をつく
もう どこへも急ぐ必要はないのだと
機関車は 夜の深みに 身をまかせて...