「いってらっしゃい。 気をつけてね。 今日は何時に帰ってこれそう?」
「うん。当分は定時に帰るつもりだ。 さっきのニュース。犯人は捕まってないだろう? 事件現場はここからそう遠くないし。 戸締りをしっかりしておくんだよ」
そう言って扉を開けると、ひんやりと湿気の含んだ風が入ってくる。極暑の季...
あいうえお・しりとり
日記
趣味
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「いってらっしゃい。 気をつけてね。 今日は何時に帰ってこれそう?」
「うん。当分は定時に帰るつもりだ。 さっきのニュース。犯人は捕まってないだろう? 事件現場はここからそう遠くないし。 戸締りをしっかりしておくんだよ」
そう言って扉を開けると、ひんやりと湿気の含んだ風が入ってくる。極暑の季...
童話の世界のように青々と、緑豊かな草原を楽しそうに走り回る少女がいた。
花に集う蝶を笑顔で追いかける少女の腕は、触れると壊れてしまいそうなほど細い。身体もその年齢よりは小さかった。けれども、その身体には不可能なほどの活発さで、軽々と小高い丘を駆け上がっていく。
頂上まで辿り着くと、視界の先に...
逆に切り返されて、女は押し黙った。
男が放ったこの台詞は、今自分が言おうとしていたものだった。女は事を急ぎ過ぎたことを感じていたが、男の顔に浮かぶ冷やかな笑みに、何も言えなくなってしまった。
ふわりと、今度は優しく男がほほ笑んだ。
「もう十分に尽くしたさ」
どんな言葉を吐き捨てられるのか...
耳をつんざくようなサイレンが辺りに響き、強烈なライトが男女を襲う。
執拗に迫る追跡者は慈悲の心を持たず、ただ望むのはあの男の命のみ。 男は女を引きずるように裏路地を走りまわり、ようやく辺りが静かになった。
痛がる女の手を離し、男は側壁にもたれかかる。
(どうやら、もう持ちそうにない) ...
ことの発端は、彼女の背にまだ純白の羽があった頃のこと。
彼女も他の下級天使と同じく、完璧な秩序の中、規則正しく規律を守り行動していた。だが、悪く言えば感情に乏しく、言われるがまま動く機械のようなもの。
しかしそれが彼女らにとってごく自然のことであり、全くの無感情というわけでもなかった。それぞ...