Nicotto Town


しだれ桜❧


 

刻の流れー47

公衆電話を公園の脇に見つけ犬飼は10円玉を数枚握り締めて車を降りた。ひろみの部屋にかけるのはもうこれで5回目だ。犬飼は焦っていた。さっきセーフハウスからひろみの仕事先に電話をすると、今日は熱があるから休みたいとお兄さんから電話があったと言う。もちろん、ひろみには兄などいないし、自分以外にそんな親しい...

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刻の流れー46

まだ夕刻には間のある雑踏の中をバイクが1台交差点を曲がって走ってきてコンビニの前の路側帯に止まる。タンデムで黒っぽいヘルメットに黒いレザージャケットの男と白いシャツだけの男が乗っていた。後ろの白いシャツの男がヘルメットを脱いだ。犬飼だ。彼は、コンビニ横にある公衆電話で何件か電話をかけていたが、どうも...

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刻の流れー45

夏の昼下がり、三代目田中は一人執務室で電話を受けていた。
「・・・バーテンダーは始末できたようだがルポライターはまだなんだな?」
「とにかく、逃げ足の速いやつでして・・・しかし、網ははっておりますので・・・」
電話の相手が言う。
「言い訳はいい。結果で示せ!」
ガチャンと電話を切った三代目田中は渋面...

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刻の流れー44

「臆病風ですか? あんたらしくもない。」
「こちらさんで欲しくないなら、他所さんに売るまでですね。」
犬飼が腰を浮かせた。
「おいおい。」
編集長は椅子から立ち上がろうとする犬飼を片手で止めながらしばらく考え込んでいたが、やおら受話器を取るとどこかへ電話をかけた。
「ああ、アキラか?、俺だ。しばらく...

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刻の流れー43

雑居ビルの火事の30分後には犬飼明は神保町にある古びた8階建てのビルの5階にある出版社を尋ねていた。
炎上したビルから逃げ出した犬飼は現場近くの公園で手早く顔と腕の汚れを洗い、服の乱れを出来るだけ整えた。なるべく人通りの多い道を選んで繁華街へ出るとパチンコ屋で「悪いな、ちょっとかしてくれ。」と、自転...

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