新怪アウトプッター(11)
- カテゴリ: 自作小説
- 2018/01/22 17:40:22
週央だというのに居酒屋「魚秀」は混んでいた。それでも二階に上がる階段の下あたりで4人掛けのテーブルを確保できた。何にするか、注文書を見ているとスマホが鳴った。福村からであった。
「ちょっと、おれ遅れるわ。営業部長に頼まれたことがあるのだ。ちょっとだけ寄り道してから、そっちの方に行く。技術開発室の湯...
週央だというのに居酒屋「魚秀」は混んでいた。それでも二階に上がる階段の下あたりで4人掛けのテーブルを確保できた。何にするか、注文書を見ているとスマホが鳴った。福村からであった。
「ちょっと、おれ遅れるわ。営業部長に頼まれたことがあるのだ。ちょっとだけ寄り道してから、そっちの方に行く。技術開発室の湯...
不可解なM社の内部文書がプリンターから打ち出された出来事から二日後、経理課では請求書の発送に追われていたが、社員の頭の中から異変現象が消えたわけではなかった。ただ、気にしたところで修正のしようがなかった。すでに、案件は上層部へ行ったので、ある意味、平社員の関知するところではなかった。一過性の手違い...
平田総務部長は何かの功績を挙げたかった。M社の総務部長とは森岡代議士の新年名刺交換会で顔を合わせている。だから、全然、知らない間柄ではない。事前に連絡して事情を話せば、相互交流ができないことはない。それに販売営業部では取引関係にもある。
「思い切って、事情説明に私が行ってきましょうか。もっとも、コ...
「社長の仰る通りです。私も、そのことを心配していたのです。」
総務部長の平田は社長の言葉を復唱した。
「今のところ、自社のデータが漏れたかどうか、ですが、それはないと思いたいですね。これから、さらに精査してみますが、それらしき兆候がありませんから。それよりも、M社の方で情報の流失について気付いてい...
電子部品S商事の小野寺は胆力のある男で、大胆な提案力と成果主義の制度の中で社長の座を射止めた実力者であった。平田総務部長の書類に一瞥すると秘書に大型封筒を持って来させ、問題の文書を封印すると木村専務と技術開発の吉岡室長を同席させた。というのはM社とは取引関係にあり、M社が製造する汎用AI部品をS商...