「契約の龍」(103)
- カテゴリ: 自作小説
- 2009/08/25 18:48:34
「まあまあの及第点、かな」
踊り終わったところでクリスがこう採点する。
「あとは、足元をあまり気にしないこと。ちゃんと前見てないと、スカートだったら裾踏むぞ」
「スカート、っていうのは、そんな恐ろしい罠が潜んでる衣裳なのか?」
「デザインによってはね。その代わりに、ステップが多少怪しくても...
ぶろぐ、の、ようなもの。
「まあまあの及第点、かな」
踊り終わったところでクリスがこう採点する。
「あとは、足元をあまり気にしないこと。ちゃんと前見てないと、スカートだったら裾踏むぞ」
「スカート、っていうのは、そんな恐ろしい罠が潜んでる衣裳なのか?」
「デザインによってはね。その代わりに、ステップが多少怪しくても...
「ちーがーう!ここは右足から下がる」
クリスの提案で「ステップが複雑で踊れる人が少なそうな」宮廷古典舞曲を習得することになった。しかも、どうせなら、という事で男女両方を覚える羽目になった。
「ターンの時、足は半歩分離す。…踵は上げて」
クリスのチェックは、なかなか細かい。指導役...
「…どんな仮面が用意されることになるやら」
国王が自分の妻が出て行くのを見送ってそうつぶやく。
「それでいいって言ったのはアレクなんだから、アレクに異存がなければいいんじゃないかと思いますわ。…ねえ、セシリア?」
「あたし?…わたしはすごく楽しみです...
部屋ではセシリアがリンドブルムを「散歩」させているところだった。
「おかえりー。ごゆっくり、って言ったのに」
「向こうは荷物整理の真っ最中だったから。邪魔するのも悪いだろう」
「荷物整理?」
「どうやら、畳み皺の付いた服で目の前に出られると、王妃様が機嫌を損ねるらしいぞ」
「&helli...
「あー…緊張したぁ」
宿泊先として案内された部屋――もったいなくも、夏に来た時と同じ部屋、だ――のベッドの上に体を伸ばして、セシリアがしみじみとつぶやいた。
「おにーちゃんは?緊張とか、してないように見えたけど」
「…自分より緊張してる人を目にすると、妙に落ち着く...