Nicotto Town



迷路の街

30代の半ばになり、人生について考えなければいけなくなった。大学院を出てポスドクとして、研究を続けていたが、自分より若い研究者が大学教員や企業の研究所に採用されていく。
少子化の影響で大学研究者の採用も少なく、気候変動による農作物への影響という企業収益に直結しない研究テーマだったため、民間企業への就...

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インフルエンサー

朝目覚めた時には、喉が痛くて食欲がないなと感じるくらいだったが、朝いちのドイツ語の講義を受けていると、悪寒を感じ始め、そのうちに、ひじやひざが痛くなってきた。講義が終わるころには、座っていることもつらくなってきた。

サッカー部の生田に、今日の練習を休むと伝え、大学をあとにした。アパートに向かう途中...

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バレンタイン

讃岐平野を走る琴平電鉄は三路線ある。コペル君は志度線を使って高校に通っていた。志度線は800mおきに駅に停まり、市の中心部までの10kmを30分かけてゆっくりと走る。2006年まで、大正15年に作られたレトロな電車が走り、車内は木製でエアコンがなく、夏には天井の扇風機が回っていた。

コペル君は、い...

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何もない町(後編)

五郎は珈琲を飲みながら、蛍の横顔を見た。
「蛍さん、東京にいたことあるんですね。」
「少しの間だけ。旭川の看護学校に通っていた頃に付き合っていた男が、東京の大学に進学したの。それで、看護学校を卒業して東京の病院に就職したの。でもね、働き始めたばかりで余裕がなくて、あまり会えなかったから、他の人に目移...

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何もない町(前編)

 帯広空港に降り立ち、レンタカーを借りた。高速道路は、山あいの足寄町で終わり、陸別町へとつづく国道の脇には、除雪車に押された雪が山のようになっていた。路面が圧雪になると、東京に引き返したくなってきた。はじめての雪道の運転で、怖くてスピードが出せない。後ろの車がイライラしているのが伝わってくるが、雪山...

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