「契約の龍」(84)
- カテゴリ: 自作小説
- 2009/07/23 16:37:07
宿のフロントカウンターで、クリスの分の夕食の手配を頼んだ。蟹・海老類は抜きで。届けられるまで小半時ほど時間がかかる、とのことだった。
部屋まで戻ると、ドアの前で、クリスがひどく申し訳なさそうに俺の上着の袖を引っ張った。
「えーと…夕食の手配をしといて申し訳ないんだけど…食事前に体を洗って、...
ぶろぐ、の、ようなもの。
宿のフロントカウンターで、クリスの分の夕食の手配を頼んだ。蟹・海老類は抜きで。届けられるまで小半時ほど時間がかかる、とのことだった。
部屋まで戻ると、ドアの前で、クリスがひどく申し訳なさそうに俺の上着の袖を引っ張った。
「えーと…夕食の手配をしといて申し訳ないんだけど…食事前に体を洗って、...
もちろんクリスはそれを見逃さなかった。
「だめですよ。私は「控え」って言ったでしょ?これは正本じゃありませんか」と教育的指導を入れた。
「えっ…」と絶句した医師は、今手渡した処方箋を取り返して、あわてて新しい用箋にそれを書き写し始めた。
「クリス…ちょっと性格悪くないか?」
「私は...
「……事務手続きに時間がとられて…食事が遅くなるじゃないか。……まあ、その分、守秘義務はしっかり守ってくれそうだけど」
むずがゆさを我慢しているのか、いらいらと落ち着きなく手や足を組んだりほどいたりしているクリスを見て、
「我慢が出来ないなら、掻いちゃえばいいのに」と感想を洩らしたところ、...
店を出て、教えられた医師のもとへ向かう。さっきの店主の話によれば、それらしい看板は掲げていないのでぱっと見にはわからない、とのことだったが、ちょうど具合の悪そうな子どもが運び込まれるところに出くわして、それとわかった。
「あそこのようだけど…ちょっと取り込み中かも」
「行くだけ行ってみよう...
呼ばれてやって来た店主は、魔法使いの事を知っている様子だった。まあ、ありそうな事ではある。
「持病の…発作が起きた時に使う薬を、どうやら持ってくるのを忘れてしまったようなんです。この近くにお医者様か薬師さまがいらしたら、薬を分けていただきたいと思って」
と、相変わらずの婉曲表現でクリスが事...