彼女と初めて会ったのは、もう十年以上前になる。「学院」の入学選抜委員の一人が、彼女だった。あとから彼女に聞いた話によると、入学選抜委員に加わったのは、亡くなった彼女の夫の代わりに、自分を補佐する魔法使いを探すため、とのことだった。
「無論、床を共にできる相手だから、という理由で選んだわけではない...
ぶろぐ、の、ようなもの。
彼女と初めて会ったのは、もう十年以上前になる。「学院」の入学選抜委員の一人が、彼女だった。あとから彼女に聞いた話によると、入学選抜委員に加わったのは、亡くなった彼女の夫の代わりに、自分を補佐する魔法使いを探すため、とのことだった。
「無論、床を共にできる相手だから、という理由で選んだわけではない...
「どうした、アレク?」
「………なんでもない」
「なんでもなくて、部屋に入ったとたんにドアのところで沈んだりするかな?」
ドアの前でへたり込んでいると、クリスが近づいてくる気配がする。かがみこんで、こっちの顔を覗き込む。
「おまけに、顔色も悪いぞ」
「なんでもないってば」
...
亜麻のシャツを作るよう、彼女に言っとくれ
パセリ、セージ、ローズマリーにタイム
縫い目も針跡もないやつを
そうしたら彼女は僕の恋人
「ばかぁっ!何度言えばわかるのよ!あんたなんかもう、大っ嫌い!」
今年に入って、もう何度目のけんかだろうか。心にもない言葉をぶつけてしまったのは、こ...
「風の匂いが、変わりましたね。そろそろですよ」
唐突に《ラピスラズリ》が言った。
危惧したような襲撃もなく、そのまま朝になった。…まあ、早朝にここを発つことにしていたから、そんな余裕はなかったかも。
空が白み始めた頃起床を促され、覚めきっていない頭で身支度を整える。荷物はほとんど寝る前...
「ああ、そうなんですか」
クリスが溜め息をついた。
「でしたら、生まれてくるまでわかりませんね。…ギレンス伯は子供が生まれたばかりの女性を追い出しまうような方でしょうか?」
「温情にあふれた方、とは言い難いですけど、冷酷な方でもないと思いますが……外聞もありますし。…でも、今より待遇が...