「契約の龍」(66)
- カテゴリ: 自作小説
- 2009/07/02 13:27:29
自室のドアを開けたら……部屋の中にクリスがいた。…しかも、部屋の一番奥の、ベッドの上に、腰かけて。
急いで中に入り、ドアを閉める。鍵は…しめた方がいいのか、外したままにすべきか、迷う。
「く………ど……」
いったいどうしてクリスがここにいるんだ、と問い詰めたいが、うろたえてしまって言葉...
ぶろぐ、の、ようなもの。
自室のドアを開けたら……部屋の中にクリスがいた。…しかも、部屋の一番奥の、ベッドの上に、腰かけて。
急いで中に入り、ドアを閉める。鍵は…しめた方がいいのか、外したままにすべきか、迷う。
「く………ど……」
いったいどうしてクリスがここにいるんだ、と問い詰めたいが、うろたえてしまって言葉...
「ああ、そうだった。懲罰委員会から、協力要請がありました。施術者の死亡で、壊れかかってる首輪がいくつかあって、修復を頼まれています」
「首輪」というのは懲罰委員会が「要監視魔法使い」に施す魔法の事で、レベルによって魔法の行使状況を監視する程度のものから、魔法の発動を抑制するものまである。その性...
「古文書解読」の授業が始まる前に、「図書館地下書庫転移陣通行呪符」(通称・地下書庫入庫パス)の発行申請手続きを行った。クリスの「冗談」を真に受けたわけではないが、やはりわざわざ必要になる度に借りに行くのは面倒な気がしたからだ。
そのついでに、第七層と第八層にある資料の目録に、ざっと目を通すこと...
「庭園」と呼ばれる森の奥深くに、奇妙に規則正しい配列で生えている数本の木立があった。行方不明になった子ども――まだ乳児を脱し切っていない幼子――は、その木立の一つの根元に、うずくまって眠っていた。安らかそうな寝息を立てて。
「こんなとこに…」
迷子捜索隊に加わっていた少女が木立の向こうから、...
「どうした?気分でも悪いのか?」
いつもの閲覧室で、机に突っ伏していると、クリスがドアから顔を覗かせてそう声をかけてきた。…もうそんな時間か。
「体調が悪いなら、ちゃんと自分の部屋に戻って休めばいいのに」
悪いのは体調じゃない。…おそらくは。
「大丈夫。熱もないし、どこかが痛い訳で...