「契約の龍」(58)
- カテゴリ: 自作小説
- 2009/06/21 04:01:05
……いったい何を吹き込まれたんだか。
「って、どういう事?寮長には、なんて聞いてる?」
「…えーと……寮に一番長い期間いる学生、って。寮のことでわからないことがあったら、彼に訊けば大抵わかる、って。寮規の細則から、備品のありかまで」
とたんにクリスが激しく咳き込む。
「……そ、そう...
ぶろぐ、の、ようなもの。
……いったい何を吹き込まれたんだか。
「って、どういう事?寮長には、なんて聞いてる?」
「…えーと……寮に一番長い期間いる学生、って。寮のことでわからないことがあったら、彼に訊けば大抵わかる、って。寮規の細則から、備品のありかまで」
とたんにクリスが激しく咳き込む。
「……そ、そう...
「アレクの立場?……なんと説明したものかな?」
クリスが軽く首をかしげる。
「とりあえず今のところは、ここの学生。二十年近くここにいる、学院のヌシのような存在だ」
今のところは、は要らないし、二十年、のくだりは誤解を招きかねないし、「ヌシ」に至っては、悪意さえ感じるぞ。
「人の事を...
「えーと……人の頭数は減ったのに、さっきより注目を浴びているような気がするのは、気のせい、なのかな?」
談話室の一隅には、軽食と飲み物を提供する場が設けられており、学生が趣味や実習で作った菓子類や怪しげなハーブティーなどもよく置かれている。そこから各々の飲み物を取ってテーブルに就くと、クライド...
「クリスティン!………………だよねっ?」
寮の玄関ホールのところで、女子寮側に向かうクリスに呼びかける――と思しき、まだ声変わり前と思える少年の――声がした。クリスが、ぴしり、と音を立てそうな様子で一瞬固まり、瞬間的に表情が消えて、ものすごい勢いでそちらの方を振り向く。十四・五歳に見える金髪に...
「ユーサーの子たちの母親が違うのって、周知の事実なのか?」
秋期の新入生歓迎セレモニーを翌々日に控え、入寮生の受入が終了した日、図書館からの帰り道でそう訊ねられた。
そろそろ避難しなくてもよくなってきたクリスだが、以前に俺があまりお勧めできない、と警告しておいた、「ユーサー伝全種類読破」を...