チャンスは思ったよりも早く訪れた。何かの授業でレポートを書くために、獲物が単独で図書館へ行くことになった、という情報を「僕」の一人がもたらしたからだ。無論、レポートを書くのは獲物一人ではないが、必要な文献を獲物が所持していない、というのだ。
逸る胸を抑えつつ、図書館に向かうと、ちょうどお守の奴...
ぶろぐ、の、ようなもの。
チャンスは思ったよりも早く訪れた。何かの授業でレポートを書くために、獲物が単独で図書館へ行くことになった、という情報を「僕」の一人がもたらしたからだ。無論、レポートを書くのは獲物一人ではないが、必要な文献を獲物が所持していない、というのだ。
逸る胸を抑えつつ、図書館に向かうと、ちょうどお守の奴...
「いいニュースと悪いニュースがある」
学期間の休みに入って家に帰った俺に、親父がいきなりこう話しかけてきた。
「いったい、何の話だ?いきなり」
「お前、「金瞳の娘」の話を覚えているか?」
「覚えているとも。おかげで「狩り」に身が入らなくて」
「「学院」にいる間は、狩る相手は慎重...
「「金瞳」の娘が現れた」
親父が帰ってきて、硬い表情でそう言った。
「へー。よかったじゃん。長年の苦労が実って。で、どの女が孕んだ子?」
「馬鹿者。儂の支配下にある女が産んだ子ではない。無論、お前の、でもないがな」
「ひでーなー。俺の好みと「彼」の好みが合わないからって、「無論」は...
「で、その龍が、抱えているものに向かって、「ユーサー」って呼びかけてたんだけど……」
「けど?」
「…それが、クレメンス大公のように思えて。…近くで見たわけじゃないから、確かだ、とは言えないんだけど…」
「それで、クレメンス大公はユーサーに似ているのかどうか、確認したくなった、と?」
...
クリスが復調するまで、ほぼ丸一日を要した。
俺も、慣れない運動をしたせいで、あちこちが痛い。
本を読みながら、カウチでまどろんでいると、セシリアが部屋の中で放しているリンドブルムが、心配そうに時々やって来てはまとわりつくので、そのたびに、「大丈夫だから」と頭を撫でてやる。何回かに一回は、撫...