Nicotto Town


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日日是悪日

「桜葬」1/2

「死ぬんだったら今日みたいな日がいい」 頭上で咲き誇る桜を見上げ、少し前を歩いていた祈織(いのり)が呟く。防護マスク越しの声はくぐもり正確な内情はうかがい知れない。口ほどに物を言うという目も、陽光を反射する透明な保護面に覆われ、結局どんな顔をして希死念慮を言葉にしたのか分からずじまいだった。 僕達人...

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「見えない糸がたどる先」

見えないという。
不確かだという。
曖昧で、脆くて、美しくて、愛おしくて。
そんなものだという。
私とあのコに架かる、何かを。

 きずな。
分厚い辞書で調べてみれば、五つの漢字が出てきた。
「絆」「紲」「絏」「緤」「羈」

人とのつながりを、私達はこう呼ぶ。
何気なく舌にのせて音にする。...

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One and Only

うららかな春の陽ざし。ぬくもりを孕んだ気まぐれに吹く風。揺れる緑の梢。
こんな風に周りが煌めく日は、無償に彼女に会いたくなる。
異形の子、とルルは周りから忌み嫌われていた。
まず真っ先に目を引くのがその白い髪。
まるで妖怪だ、と一度血も涙もない輩に不吉だとばっさりと乱雑に切られてしまったそれは、今で...

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「ワールズエンド・ダンスホール」

ナンだろう、この墜落感。
ぐーるぐーる、ぐーるぐーる。
渦の中に放り込まれて、落下していく感覚。
螺旋状に軌道を描き、真っ逆さまに急降下。
もちろん辺りは真っ暗というオプション付き。
まるでいつかの終末をこの目にしているよう。良いことなんて、何一つ無い。

 正しさを喪っていく。

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「しあわせはすぐとなり①」

がたんごとん、がたんごとん。

電車が揺れる。
窓の向こうで、鄙びた景色が一定の速さで流れていく。
車内はほぼ無人で、向かいの座席を利用する人はいない。同じ座席には私達の他に、うたた寝をする部活帰りと見受けられる学生が一人。
その他まばらに、携帯をいじる若い男性や、文庫本を開く中年女性がいたりする。...

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