仮面舞踏会 (前編)
- カテゴリ: 自作小説
- 2022/03/13 17:44:22
文雄が玄関を開け、「Alexa 電気をつけて」と 呟くと、玄関とリビングに明かりが灯った。コートとブリーフケースをソファーに放り投げると、冷蔵庫から缶ビールを取り出し、ソファーに座り足をテーブルに投げ出した。
「Alexa チャイコフスキーの1812をかけて」と言うと、スピーカーからヴィオラとチェロ...
文雄が玄関を開け、「Alexa 電気をつけて」と 呟くと、玄関とリビングに明かりが灯った。コートとブリーフケースをソファーに放り投げると、冷蔵庫から缶ビールを取り出し、ソファーに座り足をテーブルに投げ出した。
「Alexa チャイコフスキーの1812をかけて」と言うと、スピーカーからヴィオラとチェロ...
机の上に置かれた参考書は、1時間前と同じページが開かれたままだった。翔太は、コーラを飲みながら、スマホの画面を見た。そして、何度目かのため息をついた。
試験の結果を知るために、昔は大学の掲示板に貼り出された受験番号を見たり、郵便が届くのを待ったりしていたが、今は、スマホで特設サイトにアクセスするだけ...
『しばらく二人で黙っているといい。その沈黙に耐えられる関係かどうか。』『ほんとうに黙することのできる者だけが、ほんとうに語ることができ、ほんとうに黙することのできる者だけが、ほんとうに行動することができる。』 セーレン・キルケゴール
元来、庄吉も多恵子も陽気な性格であっ...
パジャマの裾から手を入れ、隣で眠っている夫の下腹部に触れると、夫は寝返りを打ち、洋子を抱き寄せた。首筋に唇を押し付けてきたので、洋子は、「違うわよ」というと、夫を押しのけた。「あなた、最近、太ってきたんじゃない。」と夫の宏太郎に話しかけたが、幸太郎は仰向けになると、再び、眠り始めた。
翌朝、宏太郎が...
ニュースを見るたびに、天気キャスターが、大雪への注意を呼びかけていた。健二は、高速バスで帰省することを諦めて、新幹線で帰ることにした。
朝早く東京駅に着くと、キャリーケースや大きなバッグを持った帰省客で混み合っていた。新幹線の当日券売り場には、長い行列が出来ていたが、1時間後ののぞみの座席をと...