Nicotto Town


COME HOME


日日是悪日

「きみが隣にいるだけで」

時刻は午後十時過ぎ。
塾帰りの北林透と、安藤双葉は初冬の夜の寒さに震えていた。とうの昔に冬服に衣替えしたものの、夜風は容赦なく着込む身を凍らす。主に、寒さに弱い安藤の。
墨汁を垂らしたような夜空には、チカチカと星が瞬く。
地上は頭上よりもずっと明るい光が三々五々に輝いていた。
そのまばゆい夜の中、二...

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「茜色の憂鬱」

どうしてこんなにも、夕暮れはさみしいのだろう。昼と夜のほんの少しの合間にしか、その名は許されない。鮮やかな紅から橙へのグラデーションは、あっという間に藍色に塗り替えられてしまう。
寂寥、寂寞。
そんな言葉が、妥当なところだろう。愁いを帯びたこのオレンジには。そして、その一瞬のせつなさの存在に己は思い...

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「ぼたん③」

「なんかさ、クラスメイトの女子を見てると、キモチワルイんだよね。積極的すぎってゆーかさ。髪染めて巻いたり、スカート短くしたり化粧したり。いかにもオープンて感じで、ヤダ。一概に悪いとは言えないんだけどさ」 

ふーんなんていかにも気のない返事をしたけれど、ソレはつまりアレですか。
中学時代の...

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「ぼたん②」

「や、付き合うとしたら寡黙(で美しい花のような人とが男の本望なのかな、って」
「で、さっきのセリフ? ……。何ソレ。私の名前が美しい花でミカって読ませることへの嫌味?」 

美しい、なんて不似合なセリフ、コイツから聞けるなんて思ってもみなかったと半ば感心していた...

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「ぼたん①」

「立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花」
不意に晴隆が口走った、そんな木曜日の午後。
  『ぼたん(美人は三日で飽きる、)(らしいね)』

 定期的に訪れる嬉しくもなんともない高校のテスト開催日二日目。
私と晴隆は公園のぶらんこに腰掛け、やることなしに佇んでいた。

シーソーに...

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