1月小題「干支/龍神に祈る」
- カテゴリ: 自作小説
- 2012/01/07 08:33:51
辰之助は、紫色の水平線に向かって櫓を漕ぎ続けた。
彼の懐には豊漁と無事を祈って龍神に捧げる束ねた自分の髪と妻の髪がある。目指す三里先の小さな岩礁には注連縄が巻かれてあり、その岩礁に懐の奉納物を置いてくるのが元日の習慣だった。同じ頃、妻のお早(さき)は祠の前で手を合わせていた。
船の初漕ぎ出しとなる元...
思ったこと、感じたことの日記
辰之助は、紫色の水平線に向かって櫓を漕ぎ続けた。
彼の懐には豊漁と無事を祈って龍神に捧げる束ねた自分の髪と妻の髪がある。目指す三里先の小さな岩礁には注連縄が巻かれてあり、その岩礁に懐の奉納物を置いてくるのが元日の習慣だった。同じ頃、妻のお早(さき)は祠の前で手を合わせていた。
船の初漕ぎ出しとなる元...
1986年12月24日、好天の午後。その日友人の健一と僕は、バイト先のケーキ屋の店頭でホールケーキを売っていた。
『男がケーキを売って客寄せになるか?』という問題は全くなかった。なぜなら、僕らはサンタクロースの格好をさせられていたからだ。
「あーっ、サンタさんだぁ!」と駆け寄る子供に、まずは170c...
5月の連休半ば、タケシは日なが一日ボーッとしていた。
明後日からはまた会社が始まるが、正直何を準備すべきか全く分からない。
大学の先輩の紹介で運良く入社できたが、仕事の仕組みを覚えかけたところで連休が始まり、中途半端な状態でほっぽり出された感じしかしない。
就職が決まった時、家族も友達もみんな...
・・・その1より、つづき。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
シャオフウを見つけた翌日、フウは妹のファ(華)と共に放牧にくると、穴の中でうずくまるシャオフウを見せた。
シャオフウの痛々し気な様子に、ファは思わず手を伸ばしかけた。すると、フウがすかさずファの手を掴んで触れる...
ピューッ、ピュピュピュッピュー。 フウは、草原の一角にある森に向かって何度も口笛を吹いた。すると、小さな茂みがゴソゴソと揺れ、そこから一匹の子狼が頭を出した。
子狼は、口笛の先にフウの姿を見つけると、舌を出しながら弾むように茂みから飛び出し、両手を広げたフウの胸へと飛び込んだ。そして、その長い舌で...