Nicotto Town


しだれ桜❧


 

刻の流れー111

原田は急勾配の山道をスムーズに登っていく。「さすがに工場長のタービンだ」トルクもあるし吹き上がりも申し分ない。車を意のままに操れるのだ。アクセルを踏むと小気味良い加速感がなんともいえない。原田は僅かにブレーキペダルを踏み込み、ほとんど速度を下げずにヘアピンカーブをまわった。「ブレーキは止まる為のもの...

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刻の流れー110

「本田さん・・・こちら、川崎、本田さん?」幾度となく呼びかけているのに10分ほど前から無線が繋がらない。山道に入って、途切れる事はあっても、全くつながらないと言うのは解せない。「おい、鈴木。本田さんに繋がるか?」川崎は隣を走る同僚に無線で聞いた。「Come Honda, This is Suzuki...

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刻の流れー109 2

その時、シルバーのスポーツカーが一台、桜の目の前で急ブレーキをかけて止まり、運転手が飛び出してきた。ドッジの助手席からサイドミラーで様子を見ていた環には、桜がクラウンに近寄るのをその男が止めたように見えた。桜は、男の肩越しに、クラウンの方をうかがったが、そのまま踵をかえして、戻ってくる。その顔がにっ...

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刻の流れー109 1

コーナーで僅かに速度を落とした本田の右側にタイヤをきしませながら環の運転するドッジのピックアップが鼻先を突っ込んで横並びになった。接触せんばかりにドッジの車体が迫ってきて、本田は思わずブレーキを踏み込みスピードを緩める。「なにをしやがる」悪態を付き、ドッジのほうを睨む本田の目に、助手席の腕を吊った女...

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刻の流れー108

「さて、行き先が決まったな」ワークデスクに2台並んだ無線機から流れる会話をニヤニヤして聞いていた原田の独り言がガレージに響いた。たった今、その一つから、表六甲に向かうと要に報告する桜の声が流れてきたのだ。興津との情報交換で、横浜の客人たちが追いかけているルポライターを事もあろうか要と桜が助ける形にな...

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