Nicotto Town



自作小説倶楽部6月投稿

『雨と彼女とその願い』
塾からの帰り道を狙ったかのように雨粒が襲い掛かって来た。このまま走って、びしょぬれでも、雨の日のサッカーの試合の時のように熱いシャワーを浴びれば大丈夫と思ったのに、肩から下げたカバンから変な音がした。背後の路上を振り向くと俺のノートやテキスト、筆記用具がばらまかれていた。ノー...

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自作小説倶楽部5月投稿

『吾輩の事件簿』地を蹴って飛んだ。咄嗟に身体が動いたのは吾輩に流れる最強のハンターの血のおかげだ。灰色の車に飛び込み、身をよじってガラスとの衝突を避ける。さらに半回転してリアシートの隙間に入りこんだ。人間のつま先が左肩に当たったが攻撃しようとしたのではなく、驚いたためのようで力はこもっておらず、ダメ...

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自作小説倶楽部4月投稿

『楽しみなドライブ』
「少しは自分を客観的に見なさいよ。みんなあんたの自慢話にうんざりしているのよ」友人が静かだが棘のある口調で言った。しまった。また妬まれてしまったわ。本当のことを話しているだけなのに、みんな私の幸せをひがむ。私が幸せなのは仕方ないことなのに。3年前から付きあっている私の彼氏はそれ...

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自作小説倶楽部3月投稿

『嫌いな女』僕は彼女のことが大っ嫌いでした。両親を失った可哀想な甥を助けたい。と人に話したことがあったそうですが僕にとっては点数稼ぎとしか思えませんでした。当時彼女は2番目の夫と離婚して女優の仕事に四苦八苦していた頃だったからです。何よりも父の妹だというのに両親が事故で死ぬまで一度も会ったことはあり...

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自作小説倶楽部1月投稿

『失くした傘』傘を捜して欲しいんです。 ブランド物ではなく古い、昔の職人が作った重い傘ですよ。布地は黒、裾に紺色の糸でJ.Mとイニシャルが入っています。ええ、同じような傘がどこにでもありますね。母によれば雨の日に父が母にその傘を貸したのが二人のなれそめの始まりで、傘には恋の魔法が掛かっているという...

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