Nicotto Town



自作小説倶楽部11月投稿(2)

『春を待つ殺人』(後編)
顔に降りかかった温かい液体のぬめる感触に俺は目を開けた。俺が握ったものの先に男の顔が半分見えていた。握った柄の感触から、握っているものが斧の柄だと気付く。たった今、薪割りのために立て掛けてあったものだ。突きだされたものを凶器だと認識していなかったのか男は斧に突進していた。男...

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自作小説倶楽部11月投稿

『春を待つ殺人』(前編)
「おひさしぶり」色あせた防寒着に身を包み、軍手を着けて山小屋を出たところで意外な人物が俺を待ち構えていた。冬山の登山には中途半端な時期に人に会うこと自体まれなのだが、その中でも最悪の相手だ。細い脚を包むブランドもののブーツはとても山に適した履物とは言えないが、彼女の影のよう...

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自作小説倶楽部9月投稿

『守護天使』
結核で亡くなったお姉様は守護天使となっていつも私の傍にいてくださいました。年老いた伯父に女中代わりに引き取られ、折檻のために暗くて冷たい部屋に閉じ込められた時も、お姉様に教えられた歌を歌い、じっと暗闇の恐怖に耐えました。夫に出会わせてくれたのもお姉様に違いありません。彼は父の借金が無効...

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自作小説倶楽部7月投稿

『幻の怪人』  「天体の位置もバッチリ。今夜こそ宇宙の使者が現れるに違いないわ」いつでもどこでもハイテンションの天文部部長の鏡子さんの背後で僕はため息をついた。一応、僕たちが所属する部活動は「天文学部」なのだが、もともとそうなのか、現部長の仕業なのか宇宙人とのコンタクトが最終目標...

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自作小説倶楽部5月投稿

『昭和怪談』
ビール? おお、ありがとうよ。冷えてるねえ。仕事で疲れた時はこの一杯が生きがいだよ。あれ? 仕事に集中しすぎてたな。いつの間にか俺一人で残業していたのか。置き去りかよ。みんな冷たいなあ。田中の奴、挨拶も無く帰ったな。田中ってのは俺が指導を任された新人だよ。社長の甥だか、イトコの息子とい...

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