#-真紅
カチカチ、カチカチ、とカッターナイフの刃を滑らせる。……殺してやる。
確かに、そう思ったんだ。
*
「ねえ東狐さん、今日遊びに行かない?」「えっ……と、」「東狐さん、暇でしょ?」「………&he...
未来日記所有者14thの日記。
その日の出来事が「全て」小説のように綴られている。
しかし一日一回しか未来が更新されないので、大まかな事しか解らず精密さに欠けイレギュラーに弱い。
#-真紅
カチカチ、カチカチ、とカッターナイフの刃を滑らせる。……殺してやる。
確かに、そう思ったんだ。
*
「ねえ東狐さん、今日遊びに行かない?」「えっ……と、」「東狐さん、暇でしょ?」「………&he...
#-晴天
ビルの屋上。赤黒い水溜まりを見下ろして頬の血糊を手の甲で拭った。見上げた空が眩しく見えれば見えるほど、あの日のことを思い出す。目に見えるもの全て、周りのものが何もかも形を無くしてゆく、極彩色のスクリーン。相変わらず仕事は忙しい。次に日本に帰れるのは、きっと半年くらい後だ。
「ままならねぇ...
「夏という季節は、どうにも好きになれません。」「あなたもそう思うでしょう?」
*
夏。厭に暑い、熱い日だった。蝉の大合唱に呑み込まれる庭先に人影が滲む。中空から降り立った灰色のドレスの裾が熱風を孕んでふわりと広がる。丸っこいパンプスの先が瑞々しく葉を伸ばす芝生に音もなく沈んだ。
「史伽様、そんな...
「思い出に、縋って生きていけないんだ。」「ヘルメス、トリスメギストス。」
* * *
「……外に、出たのかい?」
少女は頷いた。泥と血まみれの手をぎゅっと握る。
「駄目じゃないか。外に出たら。」
少女は顔を上げた。その手に握った一輪の花が風に揺れた。
「また、出てい...
#-曇天
「なあ、ドロシー。」なあに、と答えた。
「いつまで、待ってるつもりなんだ?」いつまでもよ、と言った。
「いつか、なんて、お前の心がすり減るだけじゃないか。」構わないわ、と答えた。
「お前も馬鹿だよ、ドロシー。」知ってるわ、と答えた。
「お前は、それで良いのか?」私は、答えなかった。
#...